ハイネ詩集(20)

今日は生田春月訳の「ハインリヒ・ハイネ詩集」その20を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
最近Apple Musicにはまっていて。100万人くらい居るミュージシャンの中で、チャーリープースの甘い歌声だけが異様に気に入ってしまって、もうこの”How Long”ばっかりをくり返しくり返し聴いているんですけど。


 
今日の詩は、こういう甘い感じがして良いなあと思いました。ハイネの詩はいろんな意味で甘いと思うんです。チャーリープースの歌声くらい甘い。こういうのです。
 
 
 もしもわたしが燕なら、かはいゝ人よ
 おまへのところへ飛んで行かう
 そしておまへの窓ぎはに
 わたしの寝床をつくらう
 
 ……

 もしもわたしが夜鶯うぐひすなら、かはいゝ人よ
 おまへのところへ飛んで行かう
 そしてみどりの菩提樹で
 夜つぴて歌つて聞かさうに
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
http://akarinohon.com/letters/heine20.html
(約1頁 / ロード時間約30秒)
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卍(まんじ) 谷崎潤一郎(3)

今日は谷崎潤一郎の「卍 まんじ」その3を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
どうも悪いことが起きそうな予感があって、だんだん読むのがつらくなってきたこのまんじなんですけど、読みはじめてみると、小説の完成度が高いので、この世界にぐーっと引き込まれます。柿内園子さんは、光子さんが好きでしょうがなくなった。はじめは校長の計略で、恋人同士みたいに噂されていただけなんですけど、ついに本人からそうなってしまった。外圧によって新しい恋愛の形が出来て、いつのまにか内側からもこれが生じていった。
 
 
理想を掲げているうちに、ほんとにそういう理想的な生き方に近づいてしまった……みたいなことは現実にもあるかもしれないなあとか思いました。たいていは、イヤな予測しか現実にならないんですけれども。危険だ危険だと言ってるうちに、ほんとに危険なことが起きるとか。
 
 
柿内園子さんはもう光子さんに夢中で、夫や世間や、他のことが見えなくなる。学校も行かずに女同士でデートを繰り返している。ついに温厚な夫もこの異変に気づいて、妻を疑いはじめる。なんや悪いことやっとるんとちゃうんか、と言うわけです。なんだか不幸の呼び水のような記述があるんです。園子さんは夫にこう述べます。
 
 
  あんたはあんたで好きな友達持ったらええし、うちはうちで勝手にさしといて欲しいわ。

 
園子さんは性的に光子さんと睦まじいわけなんですが、それを夫にはひた隠しにしている。それでなぜ2人きりで隠れて遊んでいるのか、夫に対してこのように説明します。
 
 
  あんた自分で、そんな綺麗な人やったら会わしてくれいうたやないか。誰かって綺麗な人好きになるのん当り前やし、女同士の間やったら美術品愛するのんと同じや
 
 
哲学者のヴェーユが、美の危険性についていくつか指摘しているわけなんですけど、たとえばこう言ってます。「美は、たましいまではいりこむ許しを得ようとして、肉を誘惑する。」あるいは、とても遠い存在に対して人が美を見いだすことについて「へだたりは、美の中枢である。」とかヴェーユは言っている。「すべて美の中には、除き去ることができない矛盾、苦、欠如が見出される。」というようなことを哲学者が言ってるんですけど! 谷崎潤一郎は、そこに共通した物語を如実に描きだしている。
 
 
夫と園子さんとの対立がなんともみごとなんです。関西弁がそもそも、バトルラップに向いている文体になっているように思いました。主人公の柿内園子さんは夫と仲たがいしてしまう。そうしてそれから……奇妙な事件が起きる。光子さんの着物が、風呂つきの宿屋の中で盗まれてしまって、家に着て帰る服が無くなったので、園子さんに電話をしてこれを持ってきてもらうことになった。なんとも謎めいた事態が起きた。
 
 
ここから先は完全にネタバレになるので、まだ読み終えていない方はご注意ください。どうも光子さんは、他の美男子(綿貫栄次郎)とも隠れて恋愛をしているようである。おどろいたことに、結婚の約束さえしていたというんです。いったい光子さんはどちらを利用して踏み台にしたのか、どうもよくわからない。光子さん本人にさえ、誰に対してまごころがあって、誰を裏切っているのかよく判らなくなっている。
 
 
光子さんとしては、結婚相手と柿内さんはまったくべつの存在で、2つの恋愛は両立できるのだという……。そんな時に、宿屋で賭博の検挙事件が起きてしまって、みんな宿から蜘蛛の子を散らすように逃げていった。賭博犯たちがそこですり替わりのトリックを使って刑事から逃れようとして、光子さんたちの着物を盗んでこれを着こみ、自分たちは賭博犯じゃ無いと警察に主張しはじめた。
 
 
物語全体と細部。この2つの係り結び、とでも言えば良いのか。みごとな符合が鮮やかに織り込まれているんですよ。隅々まで。ほんとにこう、あー、これが純文学の進化なのかと目を見はりました。こういうなんでもない文章も物語全体に共鳴しているように思えて、印象に残るんですよ。
 
 
「同じ刑事でも博奕打検挙するのんと密会者検挙するのんとは係りがちごてるんやそうで」
 
 
光子さんは不倫の罪での逮捕をすんでのところで免れたわけなんですが、レズビアンの恋人にこんな頼み事をするより他なかった。
 
 
「今夜一緒に映画でも見てたようにいうて、万一警察から電話がかかっても、そこを何ぞうまいこというといてくれなされへんかいうのんです。」
 
 
まんじを全文は読まないけど、どういう物語なのかのぞいてみたい方は『その十一』の一部だけをちょっと読んでみてください。
 
 
光子さんは、美男子綿貫との関係で、妊娠をした可能性が高い。それから……話しは次回に続きます。全6回で完結です。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
http://akarinohon.com/letters/manji03.html
(約50頁 / ロード時間約30秒)
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無題 太宰治

今日は太宰治の「無題」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
斜陽』や『走れメロス』といった名作を書いてきた太宰治も、ツイッターみたいなことをやったことがあったんですよ。しかも70年以上まえの戦時中に。戦時中にツイッターそっくりなことをしてたってすごい。
 
 
ほんの三〇〇文字くらいの文章を書いていて、しかもオチが知人に対して「バカ」と書いて終わってるだけなんです。まるっきりツイッターみたいです。太宰治ファンなら必読の小品かと思います。
 
 
大井廣介という方に対して、太宰治は愚痴っているんです。ちなみにこの人も、戦争中に坂口安吾らと一緒になって犯人当てゲームの集会を開いたりしている。
 
 
本編と関係無いんですけど、日中戦争のころの1939年にディズニーのアニメ映画が日本の映画館で公開されたりしてるんです。戦争中って謎の事柄がいろいろ起きてるんだなあと思いました。
 
 
あんな名作を書いた人が、こんな駄文を書いたのかと、読んでて楽しくなる掌編でした。
 
 

 
 
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http://akarinohon.com/letters/dazaimudai.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
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ハイネ詩集(19)

今日は生田春月訳の「ハインリヒ・ハイネ詩集」その19を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
「世界がくだけて落ちる日は/木端微塵の破片かけらから」という一節が印象的な詩を読んで、なんという直接的な恋愛詩かと思いました。
 
 
世界の終わりと個人的な恋愛が、一体化して描きだされるんですよ。こんな直球の詩は現代には成立しようがない……と思ったんですけど、よく考えたら、ハリウッド映画に、こういうのあるよなあ、と思いました。
 
 
あと、日本のファンタジーの元を辿ってゆくと、もしかすると、ハイネかゲーテあたりの詩人に行きつくんではないかという詩がありました。こんなのです。
 
 
処女は石像のやうに静かに立つてゐる
騎士はその前に跪いてゐる
その時曠野の巨人がやつて来て
処女はおそれて逃げてしまふ
 
騎士が血みどろになつて斃れた時に
巨人は家へよろよろ帰つて行く
 
 

 
 
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春遠し 宮本百合子

今日は宮本百合子の「春遠し」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
あのー、ちょうど10日ほど前の、新聞の選挙情勢調査をツイッターに纏めている方が居て、それを選挙結果と見比べながら、どのくらい的中していたのかを調べてみたんですけど、やっぱり新聞社の事前調査通りの投票結果になってるんです。
 
 
とりあえず東京の事前調査と選挙結果を見比べてみると、25の選挙区があるなかで、事前調査をくつがえしたのが東京18区の立憲民主党菅直人氏だけなんですよ。それ以外はすべて、10日以上前に新聞社が電話等で調査したとおりの投票結果になっています。あと東京21区は新聞社に接戦と書かれていてその通りで自民党の議員1人だけが他党に抜かれているくらいで、東京全域では、ほぼほぼ事前調査の通りでした。もう五十年以上もやってきた新聞社の選挙予測って、ずいぶん正確なんだなと思いました。 
 
 
それから今回、投票率の低下が危ぶまれていたわけなんですけれども、じつは台風が来ているというニュースが事前に幾度も流されたため、期日前投票が過去最多となっていた。NHKではこう報道しています。ただ、全体の投票率はやっぱりとても低くてNHKによれば「53.60%」あたりで、過去2番目に低い状況なんだそうです。
 
 
ドイツの総選挙では、投票率が76.2%ととても高い。どうして日本は投票率が下がっちゃったのかなと調べてみたんですけど、じつは2005年から2009年あたり、ちょうど10年前は、日本もまだまだ高い投票率だったんですよ。
 
 
戦後すぐから1990年(平成2年)までは、投票率はけっこう高くてですね、70%を越える時のほうが多かった。現代のドイツと同じで。昭和の時代でいちばん投票率が高かったのは1958年(昭和33年)で投票率76.99%と、4人に3人は行った。病や事情があった人以外はほぼみんな行った感じだった。
 
 
投票率が55%を切って棄権者が激増するようになったのは、2014年のことで、この頃にどういう変化があったのか探ってみると、インターネット選挙が解禁された時期なんですよ。選挙中と選挙後のSNSを見てまわっていて、なんだかむつかしい時代だなあと思いました。
 
 
宮本百合子は、戦後すぐの1946年の選挙結果について記しています。婦人に参政権が認められ、投票率は予想を超えて高かったそうです。明日の食糧危機の問題のほうが大きい時代で文中に「婦人自身にしても、参政権などよりも、やすいおいもがほしいと云い、それどころか暇がなくて、と、何度云って来たことだろう」と記されていて、餓死がもっとも深刻だった時期に、みんなせっせと投票所に足を運んだという事実が記されています。宮本百合子はこう記します。
 
 
  今度の総選挙は、日本の民主化のための重大な国民の行事であった。そのために、四月十日は休日になった。それほど大切な投票である
 
 
また、当時の政治家の性質を読み解いた分析もしていて、宮本百合子はこう記しています。
 
 
  こうして見ると、一番多くの代議士を出している自由党が、ひと手に五十七人もの社長重役をもっている。これは自由党の当選者一四一人の殆ど半数が、そういう資本家たちで占められているということである。
 
 
大資本家に政治が牛耳られてしまった……というのは現代世界中で起きていることのように思います。戦後すぐの外国人記者は、1946年の日本について取材を重ねており、この選挙結果に懸念を示していた、と宮本が指摘しています。詳しくは本文をご覧ください。あと、オチが印象に残りました。こう書いていました。
 
 
  私たちは、今回の教訓から非常に多くのことを学ばなければならない。まだまだ日本の民主化と婦人の幸福には遠い総選挙であることを知り、しっかりと代議士の活動を監視し、次のより民主的な選挙に用意しなければならないのである。
 
 

 
 
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陰翳礼讃(16) 谷崎潤一郎

今日は谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」その16を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回最終項にて、谷崎はイギリスのおばあさんたちが「近ごろの若ものときたら」という愚痴を言っていたことを紹介しているのですが、こういうことはじつは4000年前のエジプトのピラミッドが造られていた時代からずっと続いているそうなんです。真実かどうかは不明ですが、柳田国男が『木綿以前の事』という随筆で、イギリスの学者さんの言葉をこう翻訳して書いています。
 
 
  この頃の若い者は才智にまかせて、軽佻けいちょうの風をよろこび、古人の質実剛健なる流儀を、ないがしろにするのはなげかわしいことだ云々と、これと全然同じ事を四千年後の先輩もまだ言っているのである。
 
 
谷崎は「人間は年を取るに従い、何事に依らず今よりは昔の方がよかったと思い込むものであるらしい」と書きます。 
 
 
谷崎潤一郎が、メシの話しをするんですが、その製法や美味の秘訣が仔細に語られていて、その描写が凄くて、ほんとに美味しそうで……文章ってじつはこういうこともできるのかと思いました。
 
 
谷崎は、後半このように記します。
 
 
  われわれが既に失いつゝある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。文学という殿堂ののきを深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。それも軒並みとは云わない、一軒ぐらいそう云う家があってもよかろう。
 
 
次回から谷崎の小説を読んでみようと思います。
 
 

 
 
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秋と漫歩 萩原朔太郎

今日は萩原朔太郎の「秋と漫歩」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
秋になったので、萩原朔太郎のこの随筆を読んでみました。萩原朔太郎は友だちづきあいや旅行をしないかわりに、つねづね散歩をしているのだそうです。あ、そういうことは、自分も出来るなあと思うんですが、ぼくの場合は目的があるときか、図書館にでも行く時にしか外を歩かないんですけど、萩原はつねづね散歩をしている。正確には散歩じゃなくて「終日戸外をほッつき廻ってい」て「行く先の目的もなく方角もなく、失神者のようにうろうろと歩き廻っている」のだそうです。
 
 
それは文学的散策で、瞑想にふけりつつ歩くのだそうです。だからつねに野外にいる萩原朔太郎は、真夏や真冬が苦手で、身に沁みて秋が好きであると……。萩原朔太郎はこう記します。
 
 
  ポオの或る小説の中に、終日群集の中を歩き廻ることのほか、心の落着きを得られない不幸な男の話が出ているが、私にはその心理がよく解るように思われる。
 
 
またこうも記します。
 
 
  戸外の漫歩生活ばかりをする私は、生れつき浮浪人のルンペン性があるのか知れない。しかし実際は、一人で自由にいることを愛するところの、私の孤独癖がさせるのである。
 
 

 
 
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