白椿 夢野久作

今日は夢野久作の「白椿」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
秋のはじめに怪談を読むという季節外れなことになっているんですけど、今回は夢野久作の短編です。夢野は童話作家のていで、童話っぽい怖い話を書きます。
 
 
ほんとはおどろおどろしい悪夢を描きだす大長編作家なのに、なんでこんな化けかたをするんだろうかとか、こんな居心地の悪い、居たたまれない童話は読んだことないとか、いったいだれがこの短編小説のメインのターゲット読者なのかさっぱり判らない、とか思いながら読みました。反文学、という言葉を想起しました。文学が必ず避けようとする俗なところをなぜか追及している、掌編小説なんです。
 
 
印象深い童話は毒があるのが特徴だと思うし、これは現代でも絵本として人気になったりしても、ひとつもおかしくないような気もするんです。不思議な読後感でした。
 
 

 
 
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http://akarinohon.com/letters/shirotsubaki.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
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闇 小川未明

今日は小川未明の「闇」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これはとても短い童話なんです。おそらく、小川未明のファンであってもこの作品を記憶している人はごく稀だと思います。小川未明の代表作と言えば「赤い蝋燭と人魚」や「月夜とめがね」など、美しい作品があるのですが、これは……。
 
 
10秒で読み終えられるもので、ほとんどだれも知らない作品だと思うんですが、全体で8行あるので16ページの絵本にすることは出来る、絵があれば24ページくらいになるかもしれない童話です。真夜中になぜか親子で移動しなければならなくなっている。理由は判らない。
 
 
意識して読んでみると、どうも海沿いの山道のように思えてならない。月明かりさえ無い竹藪の中かもしれない。松林か、険しい岩場か、砂浜近くの道か、とにかく暗闇の中を歩いているんです。
 
 

 
 
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好奇心 織田作之助

今日は織田作之助の「好奇心」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは1分で読める掌編小説です。詩よりも短いショートショートなんですけど、ちょっとおもしろかったです。オチがすてきでした。「好奇心の病気!」というのがなんか忘れがたいセリフでした。1946(昭和21)年10月というのが、こういうふうに活写されるのかと。ぶつ切れというか細切れになった言葉が逆にリアルだなと思いました。
 
 

 
 
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畜犬談 太宰治

今日は太宰治の「畜犬談」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今、アメリカのメディアや人々が、過去の歴史に無いほどの人数と勢いで大統領批判を徹底的に行っているところで、なんだかすごい時代だと思うんですけど、今日は太宰治の短編を紹介します。
 
 
太宰治が、放し飼いの犬の凶暴さについて描いているんですけど、多少大げさに書いているんだろうとは思うんですけど、1939年当時の世相や衛生環境がうかがえてなんだかおもしろい小説でした。太宰は随筆なのか小説なのか判らないところを描く天才だと思うんですけど、犬に噛まれた友人が狂犬病に感染したんではないかと恐怖するさまを描きだすところが、鮮やかな描写なんです。
 
 
犬を飼っていたのでよく判るんですけど、たいていの犬はおびえている人とか、緊張している人にものすごく攻撃するんですよ。強気な人間には絶対に噛み付かないんです。まあ訓練された犬はまた別なんですけど、野良に近い犬はたいていそうなんです。そこのところの犬の心理を、詳らかに書いています。
 
 
当時は、のら猫天国とオオカミの群れを足して2で割ったような、荒々しい野良犬の社会があったようです。人々も戦中の不況に巻きこまれて、野良犬たちの一触即発のような雰囲気が漂っている。
 
 
興奮して同じ接続詞を2回くり返して書いていて、文体が乱れている箇所があるんですけど、これはわざと素人くさい文を書くことで、臨場感が出ているんでは無かろうかと思いました。闘わねばならぬという世相が乗り移ったような感情の描写が印象深かったです。
 
 
最後まで読むと、太宰が100年間読みつがれるわけだと思いました。不意のオチに驚く短編なんです。最近、文章で1939年を旅してみるというのを今やっているところなんですけど、これが、1939年か! と思う作品でした。
 
 

 
 
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被尾行者 小酒井不木

今日は小酒井不木「被尾行者」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
小酒井不木こさかいふぼくが気になるので、また読んでみました。これは1929年に発表された短編小説です。少年向きなんです、少年向き。1929年って意外と西洋化されていた時代なんだなと知ってビックリしました。なんだか少し星新一の作品に似ている気がするんです。ちょっと昔に書かれた小説だと言われても、通用しそうなくらい現代的に書いています。
 
 
勤め先の宝石を盗んで質屋に入れてしまった男が、探偵に尾行されている……。ぼくはあの、会社の金をほんとに使い込んでしまった人をじっさいに見たことがあるんですが、その空恐ろしい感じを、小説に描きだしています。
 
 
この文章が印象に残りました。
 
  
  清三は罪を犯したものの心理をいま、はっきり味わうことが出来た。僅な罪でさえこれであるのに、人殺しでもしたら、どんなに苦しいのか、きっと自分ならば…………
 
 
加害者としての苦悩は、とうてい耐えられない、と主人公は思うのでありました。
 
 

 
 
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按摩 小酒井不木

今日は小酒井不木の「按摩」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
小酒井不木は、江戸川乱歩のデビュー作をはじめて紹介し、乱歩のデビューに尽力した作家なんだそうです。wikiにはこう書いています
 
 
これすっごい読ませる話なんですけど、なんというか一流作家には描けない、怨念とか祟りのところを、詳らかに書いている、という感じというんでしょうか。怖い物見たさで読み終えてしまったというか、不気味な描写に引き込まれる短編でした。
 
 

 
 
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恥 太宰治

今日は太宰治の「恥」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは太宰治が、ある女性の心理を詳らかに描いていった短編小説です。あのー、ゲーテがこういうことを書いているんです。
 
 
  若者よ、精神と感覚ののびるうちに、心せよ、芸術の神は君の道づれにはなるが、君を導くことはできないことを。
 
 
ゲーテの指摘していることが、太宰の作品にまさにあてはまるんだと思います。この「恥」という小説は、ある無名の女性が、一人の小説家にファンレターを書いた、そのいきさつを描いているんですけど、文体が独白で、言葉に勢いがあって、するすると読める名作です。
 
 
ある箇所が、驚くほどこう、引っかかってくるんですよ。文章自体は読みやすいんですけど、けっして素通りさせないというのか、そのなんと言うんでしょうか。ほんとに、「あっ」と思わせて、忘れがたい印象を刻みつけるというか、時代を超える文学者だなという……。迫力がありすぎて紹介さえできないんです。
 
 
細部までこう、堪能できる名作だと思いました。作中に出てくる「不一」という言葉は、こういう意味です。
 
 

 
 
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