人間椅子 江戸川乱歩

今日は江戸川乱歩の「人間椅子」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
高級官僚と結婚して裕福な暮らしを営んでいる、佳子という小説家の元に、奇妙な手紙が舞い込んできた。「醜貌のやるせなさ」にさいなまれているストーカー男の懺悔録が、書き記されてゆくんですけど、これがすごい。
 
 
ちょうどこの小説自体が、懺悔室のようになっている構成で、なんともいかがわしい「悪魔の様な生活」が記されてゆく。不倫と、貧富の差と、境遇と、善悪を越えてこう、女に迫ろうとするこのストーカーまるだしの欲望が……。すごいとしか言いようが無いというか。
 
 
お金持ちが顧客である、オーダーメイドの椅子職人というのが絶妙な設定で、この「気高い貴公子に」なったような「フーワリとした紫の夢」を下支えしているように思います。子どもの頃すごいとおもった小説ですけど、大人になって読んでもやっぱりすごいです、これ。
 

…………私は考えました。これこそ、この椅子の中の世界こそ、私に与えられた、本当のすみかではないかと。私の様な醜い、そして気の弱い男は、明るい、光明の世界では、いつもひけ目を感じながら、恥かしい、みじめな生活を続けて行く外に、能のない身体でございます。それが、一度ひとたび、住む世界を換えて、こうして椅子の中で、窮屈な辛抱しんぼうをしていさえすれば、明るい世界では、口を利くことは勿論、側へよることさえ許されなかった、美しい人に接近して、その声を聞き肌に触れることも出来るのでございます。
…………
 
(※脱字を修正しました。2018年6月14日)
 

 
 
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火星の運河 江戸川乱歩

今日は江戸川乱歩の「火星の運河」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
少年探偵小説で有名な江戸川乱歩はじつは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの暗黒SFみたいな、謎の小説を書いていたわけで、今回は火星の物語です。
 
 
文体がかっこいいです。
 

頭の上には夕立雲の様に、まっくらに層をなした木の葉が、音もなくしずまり返って、そこからは巨大な黒褐色くろかっしょくの樹幹が、滝をなして地上に降り注ぎ…………
 
火星をこんなに豊穣に描いた小説家は、はたして他にいるんだろうかと思いました。まだ火星がどういうものか、その正体がよく判らない時代だからこそ、かえって魅惑的な空間になったのだ、という感じがしました。果てなく続く、まっくらな密林と、油のようにトロリとした沼に覆いつくされた火星……。
 
 

 
 
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赤いカブトムシ 江戸川乱歩

今日は江戸川乱歩の「赤いカブトムシ」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これはもう完全に、小学校の3年生向けに書かれた、ひらがな中心の児童文学というか、子ども用の探偵小説なんですけれども、読んでみると面白かったです。
 
 
怪しい「黒マント」という男があらわれて、子どもたちがこれを、追いかけまくるんですけど……ハリウッドのテレビドラマみたいに、第1章のオチと次章の始まりが印象的なんですよ。2章の始まりがこうなんです。
 

森の中の、ふるいせいようかんのまどから、小さい女の子が、たすけをもとめてなきさけんでいた、そのあくる日のこと。
 
「たんてい七つどうぐ」とか「どこかに、かくし戸があるにちがいない。どこだろう。」とか「ちかしつへのおとしあな」とか「まっくらなほらあなのおく」とか「せいどうのまじん」とか……現代の最新ゲームでもしょっちゅう出てくるモチーフが描きだされていて、するすると読めました。
 
 
「まほうはかせ」と少年たちの闘いがおもしろかったです。
 
 

 
 
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死のなかの風景 原民喜

今日は原民喜の「死のなかの風景」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは「原爆小景」という詩集の作者原民喜が、戦後の1951年に発表した短編小説です。
 
 
原民喜の初期作品と後期の翻訳を見ていて、いちばん印象に残ったのは、氏はそもそも童話作家からスタートして、最後まで童話について考え続けていた、ということを知ったことです。原民喜はスウィフトの『ガリバー旅行記』のように優れた童話を、いつかみずから描きだして、子どもたちに読ませたかったのだ、と思いました。
 
 
「死のなかの風景」の作中に「彼は」という記述がいくつも出てきます。それから「映画会社」という言葉も。戦争中の人々の生を描きだしているんですが、童話作家として長年培ってきた三人称の物語描写と、日記や随筆とも通底している平易な文章とが入り混じった文体で、物語に引き込まれました。

 
この物語には、「彼」「妻」「母」「友」という記述がほとんどで、固有人名が書かれていないんです。誰からも語られなくなった、誰も思いだすことが出来ない死者について、原民喜が描こうとしたから……なのかもしれない、と思いました。
 
 
作中に描かれるブリューゲルの『死の勝利』という絵画については、野間宏が戦後すぐにこれを描きだしていました。終章も『暗い絵』と通底している物語構成でした。
 
 

 
 
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泡盛物語 佐藤垢石

今日は佐藤垢石の「泡盛物語」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
家族のために厳しい肉体労働をしている男の、実話を記していった物語なんですけど、あまりに貧乏で、かまどに火を入れるための薪さえろくに手に入れられず、実家に帰る金さえ無い。20世紀末では、知識のある人は裕福だったわけなんですけど、昭和初期には貧困を描きだす文筆家が居て、そういう人が「天知る、地知る、我知る、人知る」という後漢書の言葉を言ってみたりする。
 
 
母が危篤となったという電報が届いたのに、貧しさのために母の家に帰ることが出来ない。肉親へ詫びの手紙を送ると、友人からこういう手紙がとどいた。この手紙の前文が印象に残りました。
 

前略、御健勝の由慶賀に存じ候。さりながら自今御窮迫との御事、それしきの境遇苦慮するに足らずと、遠方より御声援申上げたく候。
 
友人は、仕事を用意したから、母や妹の暮らす街へ帰って来いと言うんです。
 
 

 
 
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秋風記 太宰治

今日は太宰治の「秋風記」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
太宰治が、生田長江の詩を引用しています。
 
 
『ゲーテ詩集』や『ハイネ詩集』などを翻訳した生田春月の、お師匠さんが生田長江なんですが、2人とも近代文学の翻訳者であり詩人だったんですけど、太宰治もこの長江の仕事には興味を持っていたようなんです。
 
 
えーと、これが書かれたのは1939年(昭和14年)の29歳ごろのことです。戦争が徐々に拡大してゆくころに、太宰治は、息苦しい小説を書いている。第二次大戦中にリアルタイムで、日本の戦争のことを書けて、戦後も世界中で読まれた作家は太宰治ただ一人なんです。作中に、身罷ることを思いとどまった女性Kを描写した場面があるんですが、本文の……
 
 
  Kは、それを知っている。
 
 
という一文が印象深かったです。文学に用いられる『K』は、カフカの主人公『K』が有名だと思うんですけど、漱石も『こころ』でKを用いています。漱石の本名である金之助の『K』……という1文字を、漱石自身も、イギリス時代からときおり使っていたんです。
 
 
太宰治はそういう同時代文学をたぶん知っていて、女性にKと名づけたように思いました。今作はなぜか濁点が多いのが特徴で、なんとも言えず文そのものが美しいんです。ほんの一部分をランダムに抜き出しても、なんだか雰囲気があります。
 
 
「ほのかなよろこび」
 
「僕には、花一輪をさえ、ほどよく愛することができません。」
 
「ゆきあたりばったりの万人を、ことごとく愛しているということは、誰をも、愛していないということだ。」
 
「過去も、明日も、語るまい。ただ、このひとときを、情にみちたひとときを、と沈黙のうちに固く誓約して、私も、Kも旅に出た。」
 
「日に日に快方に向っている。」
 
……つづきは本文をご覧ください。
 
 

 
 
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交尾 梶井基次郎

今日は梶井基次郎の「交尾」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
梶井基次郎が好きなんですけど、この「交尾」というのがほんと良いんです。肺病の流行るさびれた街をゆく、悠然とした猫を、梶井基次郎が描写しています。もうストーリーなんてどうだっていいと思うくらい、その文体が美しいんです……。梶井基次郎は、街をゆく猫がじつに優雅であることを、こう記します。
 
 
  彼らはブールヴァールを歩く貴婦人のように悠々ゆうゆうと歩く。
 
 
それから、「巨大な工場地帯の裏地のような」とでも形容したくなるような「露路」に現れる小鳥たちの奇怪さをこう記します。
 
 
  隣の物干しの暗いすみでガサガサという音が聞こえる。セキセイだ。小鳥が流行はやった時分にはこの町では怪我人けがにんまで出した。「一体誰がはじめにそんなものを欲しいと云い出したんだ」と人びとが思う時分には、尾羽打ち枯らしたいろいろな鳥がすずめに混ってえさあさりに来た。もうそれも来なくなった。そして隣りの物干しの隅にはすすで黒くなった数匹のセキセイが生き残っているのである。
 
 

セキセイというのはとうぜんセキセイインコのことなんですが、あと河鹿というのはカジカガエルのことです。ルリは小鳥のことで、wikipediaに瑠璃色のオオルリの写真が載っています。(あるいはコルリかもしれません)
 
 
ところで地球上でもっともはじめに、原始的な歌を歌った生物は、田んぼによくいる、あのカエルかもしれない。世界最古の歌うたいは、じつはカエルだった! ……かもしれない。たしかに考えてみればそれで正解のような気がします。梶井基次郎はそのことをとても詩的に記しています。
 
 

 
 
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