夏目漱石 私の個人主義

夏目漱石の、《私の個人主義》を掲載しました。ブラウザ上で全文およみいただけます。 (約50ページ)


僕はこの講演録をむかし本屋で立ち読みして、なんだか妙に感銘を受けました。むずかしいことをわかりやすく、またおもしろく述べています。夏目漱石ってじつはひょうひょうとした知識人だったんだなあと、目から鱗が落ちた気分でした。はじめて書いた小説が、ネコを主人公にしたものなんだから当たり前かもしれませんが。もっと堅苦しいことを考えている人なのかと思っていました。
夏目漱石はこの講演で、他人の自由を重んじ、義務をともなう個人主義について丁寧に説いています。




以下は夏目漱石の記した言葉です。






私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。




ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた! こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事ができるのでしょう。容易に打ち壊されない自信が、その叫び声とともにむくむく首を擡(もた)げて来るのではありませんか。


必ずしも国家のためばかりだからというのではありません。またあなた方のご家族のために申し上げる次第でもありません。あなたがた自身の幸福のために、それが絶対に必要じゃないかと思うから申上げるのです。







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井上ひさし『組曲虐殺』


 
 

 きのう井上ひさしさんの戯曲『組曲虐殺』を読みました。 プロレタリア文学者の小林多喜二が主人公の戯曲です。 文学に疎い僕は、井上ひさしさんの作品と言えば『父と暮らせば』しか知らず、はじめてそれを見た時は衝撃を受けました。
 あの廃墟のようでいて温かい空間についてが忘れがたく、父が子を想い、子が父を想う物語は、まのあたりにした者の心にいつまでもずっと残り続けるものだと感じました。

 タイトルこそ鮮烈な印象ですが、『組曲虐殺』は特高の古橋と山本へのまなざしが温かく、プロレタリア文学者である小林多喜二との終盤の会話に魅了されました。井上ひさしさんの徹底したヒューマニストとしての思想に打ちのめされた思いです。





 以下は井上ひさしさんが戯曲に記した言葉です。




 絶望するには、いい人が多すぎる。希望を持つには、悪いやつが多すぎる。なにか網のようなものを担いで、絶望から希望へ橋渡しをする人がいないものだろうか




 世の中にモノを書くひとはたくさんいますね。でも、そのたいていが、手の先か、体のどこか一部分で書いている。体だけはちゃんと大事にしまっておいて、頭だけちょっと突っ込んで書く。それではいけない。体ぜんたいでぶつかっていかなきゃねえ。

 体ごとぶつかって行くと、このあたりにある映写機のようなものが、カタカタと動き出して、そのひとにとって、かけがえのない光景を、原稿用紙の上に、銀のように燃えあがらせるんです。ぼくはそのようにしてしか書けない。モノを考えることさえできません。

 そのときそのときに体全体で吸い取った光景のことかな。ぼくはその光景を裏切ることはできない。その光景に導かれて前へ前へと進むだけです。




あとにつづくものを 信じて走れ




(初出「すばる」二〇一〇年一月号)











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中原中也詩集《山羊の歌》サーカス 汚れっちまった悲しみに 朝の歌

中原中也の詩集《山羊の歌》を公開しました。《サーカス》 《汚れっちまった悲しみに》 《朝の歌》など、
全文をお読みいただけます。

僕はなんと言っても、サーカスという詩が好きです。
「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」という文字がたまらなく好きです。
他の詩で、これほど魅了されたオノマトペはありません。



幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り
    今夜此処での一と殷盛り

サーカス小屋は高い梁(はり)
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒(さか)さに手を垂れて
  汚れ木綿の屋蓋(やね)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
  安値(やす)いリボンと息を吐き

観客様はみな鰯
  咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん


     屋外(やぐわい)は真ッ闇(くら) 闇(くら)の闇(くら)
     夜は劫々(こふこふ)と更けまする
     落下傘奴(らくかがさめ)のノスタルヂアと
     ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん







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