レ・ミゼラブル(8) ユーゴー

今日はビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル 第一部 ファンティーヌ』
『第八編 反撃』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。


前回、市長であるマドレーヌ氏がすなわち生まれついての泥棒ジャン・ヴァルジャンであることが明らかとなりました。ユーゴーはマドレーヌさんの心理を描写する時に、猛烈に筆を走らせるのです。こんなことを書いています。


・(マドレーヌの内心の奥底をのぞくと)われわれは深い感動と戦慄を自ら禁じ得ない。
・海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である。


すごい書きっぷりですよね。「俺の書いた小説を読んだらもう、深い感動と戦慄を禁じ得ないんだ!」って自分で書いて自画自賛しちゃってる。それでも納得して読めるんだからすごいと思います。こんなに筆が走っている小説というのも滅多に無いんじゃないかと思います。作者が興奮して書いているのがすごい伝わってくる文章ですよね。ユーゴーはこう書きます。

ある時を期して、考えに沈める一人の人の蒼白なる顔をとおし、その内部をのぞき、その魂をのぞき、その暗黒のうちをうかがい見よ。そこにこそ外部の静穏の下に、ホメロスの描ける巨人の戦いがあり、ミルトンの語れる竜や九頭蛇の混戦があり妖怪の群れがあり、ダンテの言える幻の渦がある。



過去の自分と決別したはずなのに、とマドレーヌ氏は葛藤しています。かつて泥棒であったマドレーヌ氏は、長い年月をかけて改心し、正直と善良に立ち戻って過去を乗り越えました。しかし、まったく不意に「昔の自分」にそっくりな人間が現れる。老人シャンと自分はまったく別人で無関係なんだと思おうとしても、どうしても無視できない。老翁の冤罪を晴らすためには「私が泥棒のジャン・バルジャンだ」と言わざるを得ない。彼は自首しようと決めるのですが、ただ本当のことを言って全てを失い、これまでの努力を台無しにすることがはたして善良な行いであるかと考えればけっしてそんなことはない。正直に生きるというのは、ただ事実をそのまま野方図に言えば良いということでは無い、とマドレーヌ氏は悩みます。


「天国のうちにとどまって悪魔となるか! あるいは、地獄に下って天使となるか!」
とマドレーヌは叫ぶのでした。マドレーヌは亡きミリエル司教に感化されて人生が変わったわけですから、キリスト教における「苦難を引き受ける」ということに信を置いているのであります。


その夜半、マドレーヌが見た夢というのがなんとも奇妙なんです。マドレーヌは夢の中で、男からこう述べられる。「君はどこへ行くんですか。君はもう長い前から死んでるということを知らないのですか。」


彼はなかば夢遊病者のように、シャンの裁判が行われる場へと馬を走らせる。関わり合いにならなければ、マドレーヌの未来はいっけん明るい。しかし彼は、危険であろうとも事実を知りたいと思うのでした。


いっぽう、病に倒れたファンティーヌはやや健康を取り戻し、マドレーヌ市長が娘のコゼットを連れて帰ってくれることを待ち望んでいます。マドレーヌは長い旅路の末、シャンの裁判が行われている場にたどり着きます。マドレーヌ氏はシャンの生い立ちを聞き、ついに裁判所でこう述べます。
「私がジャン・バルジャンである」
シャンマティユーの冤罪は晴れ、無事放免されました。
マドレーヌ氏は急ぎファンティーヌのもとへと引き返します。



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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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