劒の教義 マハトマ・ガンジー

 
今日はマハトマ・ガンジーの「劒の教義」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは暴力に直面するという、危機そのものについて書いてある評論文です。生涯をかけて非暴力不服従を貫き続けたガンジーが、正当防衛に関する問題を検討しているものです。慎重に読まないと意味が理解しにくいかと思いますが、ガンジーは隷属から脱するにあたって「怯懦におちいるな」ということを熱心に説いています。当時、その社会全体が暴力に直面していたから、このように真正面からの表現になっているようです。社会全体が暴力に直面していたというと、日本で言えば2・26事件の時代だと思います。ガンジーは倫理の復権を実現するにあたってどこに重点を置いていたのか、という箇所を見てゆくと興味深いかと思います。ガンジーは敬虔なヒンズー教徒であり、またインド独立を成し遂げた運動家であり、また教育改革における具体案などを政府に提示しその改革を実現させるなど、政治家としての手腕も持ち備えており実に多様な知性を持つ哲人です。現代インドの経済学者がガンジーの経済理論を検証している本があるのですが、ガンジーの経済理論はほぼ一世紀ほど経った現代にさえ通用するほど精確であるのが驚きです。ガンジーは机の上で空理空論をやる人物では無く、実際に現場に赴いてそこでなにが起きているかを人々と共に体感しながら改革を行っていったので、人々を助けるにはまず暮らしと心情が安定しないとどうにもならないということを骨身に染みて実感していたようです。

経済って辞書で調べてみるとこういうことが書いています。

けい‐ざい【経済】
[文中子(礼楽)] 国を治め人民を救うこと。経国済民。政治。

そもそも「経済」というのは治世を行い貧困問題を解消してゆく過程で「金銭の流れを作る」という意図があったようです。今では全体の景気を無理やり上げるために環境をデタラメに壊すという本末転倒の経済が叫ばれているように思えます。ただ現代でも、ムハマド・ユヌスのマイクロクレジットのように、生活の改善に必要不可欠だから、金銭の流れを作ってゆくという、ほんらいの意味での経済がクローズアップされることがあります。東日本大震災後に行われた融資関連企業の活動でも、このマイクロクレジットに似た融資システムが応用されました。


ガンジー思想の特徴は多様性で、どこかに片寄らないというのがすごいんだと思います。経済至上主義ではありませんし、ヒンズー教原理主義でもないし、生涯を教育に専念したわけでもないんです。かなり危機的な状況に何度も直面しながら、どうして片寄らなかったかというとたぶん、歴史を強く実感する人物では無く、哲学者のキルケゴールのように「人間の生にはそれぞれ世界や歴史には還元できない固有の本質がある」と考えていたからじゃ無いかなあと思ったんですよ。ガンジーは大きな改革を成功させたのですが、その思想を見ていくととにかく個人を見ようとしているんです。この劒の教義でも、家族の不幸についてとにかく考えている。個人を見ているんです。ヒトラーの場合は個人を完全無視して全体の勝利を願ったわけですが、ガンジーは問題を考える時に個人からスタートして、未来を見透せるところまで思想を深めてから、再び個人に帰ってくる。


ガンジーは敬虔なヒンズー教徒でありながら、教典に書いてあることは絶対、とは考えない。そしてどのような立場もないがしろにしない。ガンジーがおもしろいっ、と思うのはやっぱり敵であるはずのイギリス人に対して怒りをぶつけたりしないし対等に向かい合おうとするところだと思います。ここでも全体としての人間を見ていないで、イギリスの一人の友人を見ているわけです。ガンジーは一人一人の不都合をよく見て、教典のまま活動して思考停止におちいる人に多くの助言を残しています。それからお金は不浄なものと思われがちな社会で、ちゃんと金勘定のできる健全な商人になりなさい、と貧しい人々に教えているのも面白いと思います。貧しい人々が教えを受けて普通の商人に成長するなんていっけん夢物語のようですが、ガンジーは実際に数多くの人々を自立した商人に成長させています。


「不服従」や「自立」ということが大切だ、ということを人々に説いてまわったのがガンジーで、またガンジーは市場に過剰に依存しないことの重要性を説いていて、金や人気が重視されすぎる現代日本から見ても、ガンジーの論理は参考になる点が多いと思います。ガンジーは自立の手段として、綿織物の仕事や、塩の生成や、デモ行進、というような小さなエネルギーで持続可能な活動を、数多くの人々と共に実施し推奨しています。健全な不服従、という行為がガンジーの一番の特徴であると思います。暴力を防ぐのに暴力も辞さない、という発言のあとにガンジーはその上で非暴力はより尊いということを説いています。僕は壮大なことを知りたがり小さな結果も残せない、という言行不一致に悩むことが多いので、ガンジーのように発言と行動と結果がしっかりと一致している人の活動に感銘を受けるんです。




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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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