レ・ミゼラブル(17) ユーゴー

 
今日はビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル 第三部 マリユス』
『第一編 パリーの微分子』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
前回、第二部コゼットの最終話にて、ジャンヴァルジャン(マドレーヌ氏)が修道院の高い壁を越えて避難してきたわけなんですが、それを助けたのがフォーシュルヴァン爺さんで、この人はかつては自分自身がトクをするような生き方が好きで、利己的に生きてきたのでありますが、歳をとって生活にかなりの目処が立ってくるようになると他人の役に立つことが面白いと感じるようになって利他の喜びというものに目覚めるようになったのであります。フォーシュルヴァン爺さんは、ジャンとコゼットをかくまいます。
 
 
死者を弔うために、この修道院から棺が出棺されます。また街の墓地ではすでに修道院に密かに身を隠しているマドレーヌの棺までもが埋葬された。コゼットをこの修道院に正式に保護させるため、いったん不法に立ち入った修道院を出て、そうして正面から入り直すということをするのであります。正しく亡命するとでも言うような、そういう事態が展開します。


ジャンは亡命者として、自分がいったん生きたまま棺に入り、身を隠したまま危機を逃れるというアイディアを提示し、これを実行します。ジャンが棺に入り、それは事情を知らぬ人々の手によって墓地へと運ばれます。ここら辺の展開は、往年のハリウッド映画のような緊張感があります。ジャンは暗闇の中で、自身を包み込む棺が墓地に掘られた穴の、その土の底へと着地する瞬間を耳で聞き取ります。すごい瞬間ですね。
 
 
当初の計画では、フォーシュルヴァン爺さんが馴染みの墓掘り人を酒場へ誘って、棺に土をかけて埋めてゆく仕事を後回しにさせる計画だった。死者への祈りが終わり、墓場から皆が立ち去った瞬間に、ジャンヴァルジャンは一人棺から生還する予定だった。ところが、この馴染みの墓掘り人というのが、この計画を実行に移す寸前に亡くなっていた。
 
 
死者を送り出す祈りの言葉を聞き、人々が去る気配を探り、静まりかえった墓地の中で、いざ暗い穴の底から脱出を試みようとしたジャンは、自分の棺にどさりと土をかけられる音を聞き、衝撃のあまり気を失ってしまいます。
 
 
事情を知らない墓掘り人をなんとか説き伏せて土で埋めるのを止めさせ墓場から引き離し、フォーシュルヴァン爺さんはなんとかジャンを墓地の穴から救いだすのですが、はんぶん生き埋めとなっていた主人公ジャンヴァルジャンは、棺の中で死んだように凍りついていたのでした。ジャンが墓の中から蘇生するシーンというのはなんとも言えぬ神秘性が漂う、そういう描写でした。
 
 
こうして不法に侵入してしまった修道院を出て、そうして正門からまた入る、という亡命劇は幕を閉じます。無事ジャンヴァルジャンと幼子コゼットは、修道院に迎え入れられるのでした。
 
 
ジャン・ヴァルジャンは再び名前を変え、爺さんの弟ユルティム・フォーシュルヴァンとして生きるのであります。
 
 
コゼットは純粋な幼子であったので、すっかり自分の父が、この育ての親ジャンヴァルジャンであることを信じているのであります。コゼットは無事修道院での暮らしに馴染むようになります。ジャンは修道院の庭師として生きるのであります。そうして修道院の厳しい躾のもと暮らすコゼットを見つめながら、ジャンは幼い頃に居た牢獄と、今のこの修道院での厳しい日々とを比べてみもするのでした。一方は冒涜を尽くした男たちの監獄。一方は純潔であるがゆえそこから出ることの無い女たちの修道院。ユゴーは監獄を「暗黒」と表現し、修道院を「影」と記します。これは明るみに満ちた影である、とユゴーは述べるのです。前者は鎖に繋がれるよりほかない。後者は自ら信じることによって繋がれている。両者には共通項がある。それは贖罪のためにそこに居るという共通項です。ジャンはこのことをこう考えます。なんの罪も無い彼女らが罪をあがなっている。いったいなんの罪をあがなっているのか。それはおそらく、他者のための贖罪にちがいない、とジャンは考えます。人々の罪を許すために、修道女たちは日々祈りをささげているのであります。この修道院は、若き日のジャンがミリエル司教から救われたように、再び彼を苦難から救いだしたのでした。
 
 


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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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