晶子詩篇全集(28) 与謝野晶子

 
 
今日は「晶子詩篇全集」その28を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回の詩には、不吉な天候と、哀しい感じが共鳴して描かれています。今、まさに真冬ですが、「夏日礼讃」という詩が印象深かったです。これは夫の与謝野鉄幹を追い、シベリア鉄道でヨーロッパへ旅したその4年後の1916年(大正5)に女学世界に発表された詩です。
 
 
ああ夏が来た。こんな日は
君もどんなに恋しかろ、
巴里(パリイ)の広場、街並木、
珈琲店(カツフエ)の前庭(テラス)、Boi(ボワ)の池。
 
 
今回の詩篇には、夏の風景や五月雨の中に、恋の心情が美しく編み込まれています。「五月雨と私」という詩があるんですが、恋と涙の関係性が示唆されていて美しいです。
   
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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詩(1) 石川啄木

今日は石川啄木の「詩」その1を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回から5回ほどに分けて、石川啄木の「詩」を順番に公開してゆこうと思います。石川啄木は岩手出身の歌人で、歌集「一握の砂」が代表作です。
 
 
これは、文語調の詩と言うんでしょうか。
「聞け、今、巷に喘げる塵の疾風」というように
一文を抜き出しても、格調高いというか、すごく迫力がある言葉になっています。この詩集の一番はじめに記された「啄木鳥」という詩なんですが、これがすごいんです。啄木の名前の由来である「啄木鳥」も登場しますし、この詩が啄木にとってもっとも重要な詩であるようです。こんな詩です。
 
 
啄木鳥

いにしへ聖者が雅典(アデン)の森に撞きし、
光ぞ絶えせぬみ空の『愛の火』もて
鋳にたる巨鐘、無窮のその声をぞ
染めなす『緑』よ、げにこそ霊の住家。
聞け、今、巷に喘げる塵の疾風
よせ来て、若やぐ生命の森の精の
聖きを攻むやと、終日、啄木鳥(きつつきどり)
巡りて警告夏樹の髄にきざむ。
 
 
一文目から何のことを書いているのか判らなかったので調べてみたんですが、これは「ギリシャはアテネの森」のことを「雅典(アテネ)の森」と書いているんです。ギリシャ神話のことを書いているようです。
「愛の火」というのがまた謎です。
ちょっと調べてみたんですが、どうもギリシャ神話の「プロメテウス」が鍛冶の神の窯のなかに灯心草を入れて点火して人々に分け与えた「火」を、詩に描いたようです。ギリシャ神話によれば、ゼウスが大洪水を起こして人類を窮地に追いやり、人々から火をうばったんですよ。それでプロメテウスが「火」を再び人々に与えた。これがどうも、この詩で描かれている「愛の火」だったのかもしれないなあと空想しています。つまり、救済のための暖かい火のことです。この詩には続きがあります。こう記されています。
 
 
往きしは三千年、永劫猶(えいごうなほ)すすみて
つきざる『時』の箭(や)、無象の白羽の跡
追ひ行く不滅の教よ。――プラトオ、汝が
浄きを高きを天路の栄と云ひし
霊をぞ守りて、この森不断の糧(かて)
(くし)かるつとめを小さき鳥のすなる。
 
 
プラトオ、というのはプラトンのことです。文学研究者の方がそう記しているのでこれは間違いありません。『愛の火』というのは哲学者プラトンの説いた「イデアの愛」のことなのだそうです。プロメテウスの火では無いようです。
 
 
石川啄木の記した「不滅の教」と「不断の糧」という言葉がたいへんに印象深いです。
 
 
プラトンは、不滅の愛(エロース)について考えた哲学者です。プラトンは師ソクラテスやディオティマの話を通して、愛(エロス)についておおよそこのように語っています。 
 
 
  愛(エロース)とは、美と欠乏との2者から生まれた。ゆえにエロースはつねに美を求めるが、美そのものでは無い。愛があれば不死となるわけではないが、愛があれば、必ず永遠を求むる。愛とは自分自身に「永久」を見いだすものであり、過去にならい学び、再び生まれくるものたちへと脈々と受け継がれてゆく智そのものである。愛(エロース)とは真に「善きもの」へと向かうものであり、それを求めることこそが最も崇高な愛(エロース)である。私はあえて主張するのである。人はみな愛(エロース)を尊重せねばならぬ、と。
 



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晶子詩篇全集(27) 与謝野晶子

 
 
今日は「晶子詩篇全集」その27を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
「四月の太陽」と「雑草」という詩が好きになりました。現代にもごく普通にある自然界を書いていて気持ちの良い詩です。
 
 
静かな路地で生きている牡丹を見ると魅了されます。与謝野晶子がこの牡丹の神秘性を描いているんです。言葉がカメラよりも詳細に牡丹の姿を描き出していて、すごいなと思いました。
 
 
  

 
 
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レ・ミゼラブル(19) ユーゴー

 
今日はビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル 第三部 マリユス』
『第三編 祖父と孫』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
前回、ジルノルマンという爺さんが登場しました。この爺さんは、とびきりの長寿者で、九十歳(現代で言えば百歳くらいじゃないでしょうか)を超えてなお、腰も曲がらず、声も大きい。ジルノルマン爺さんは「フランス大革命は無頼漢どもの寄り合いだ」というのであります。老翁は言います。「妻の他に、もう1人の女を熱烈に愛する場合、妻には財産をぜんぶあずけておくのがいい。妻が不満を持つのなら、夫の財産を使いはたして満足するだろう」実際ジルノルマン老人はそうやって生きてきたのであります。
 
 
このジルノルマン爺さんは、84歳になってから、女中さんが産んだ赤ん坊を自分の子どもとして育てはじめたりするんであります。女中さんによれば「この子はジルノルマンさんの子どもなんだ」と言うんであります。爺さんはこの困った女中さんマニョンの願いを聞いて、赤ん坊を育てるための養育費を渡してやったりしたんです。
 
 
老翁は80歳の頃に隠居して、昼は静かに家の中に居て、夜になるとよく客を招いた。この娘である、ジルノルマン嬢。彼女はずっと貞節であり、老年になるにつれて善良になっていった。彼女の様子のうちには、まだはじまらないうちに既に終わった一生涯がもつところの茫然自失さがあった。この親子が2人で暮らしているんです。そうして、ジルノルマン爺さんの孫がこの家に住むようになった。
 
 


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晶子詩篇全集(26) 与謝野晶子

 
 
今日は「晶子詩篇全集」その26を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
与謝野晶子は自然のことをたくさん描いているのであります。風景の中に、読者や筆者が急に挿入されていて壮大な詩なんですよ。
 
 
また、今回の詩篇には「大震後第一春の歌」という、震災の詩が残されています。これは1923年(大正12年)9月1日に起きた関東大震災のことを描いた詩です。ぜひ読んでみてください。
 
 
あのー、ヨシフ・ブロツキイという歴史的な詩人の方がですね、大組織というのは「きのうのこと」を哲学的に倫理的に語ってしまうことがあるんだ、と言うんです。それは良くないことなんだと言うんですよ。それに対してヨシフ・ブロツキイという詩人は、おおよそこのように述べているんです。「詩や文学や物語というものは、つねに今日を語るものであり、『明日』にもなる」
 
 
とおい懐かしい思い出のなかには、普遍性があってそれは明日にも再びくり返されるかもしれない。しかし、大組織が語るきのうの哲学には、明日のことがまるで書いていない。くわしくはこちらを読んでみてください。
 
 
与謝野晶子のこの詩篇を読んでいると、まさに、今日や明日のことを言葉にして居るんだと思いました。

 
 

 
 
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狂人日記 魯迅

今日は魯迅の「狂人日記」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
「月がきれいだ」ではじまるこの「狂人日記」という物語は、かの有名なゴーゴリが書いた「狂人日記」に影響を受けて、異常な心理に陥った人物の物語を日記形式で書いたものです。ゴーゴリの狂人日記では、高貴な女性に恋心を抱いたり自分が王位継承者だと思い込んだりした男が描かれているんですが、ぼくも誇大妄想に突き動かされることが多いので共感出来ます。
 
 
しかし、魯迅の「狂人日記」はもっと怖ろしい内容で、危機的な物語が苦手な人は読まないほうが良いと思います。これはカニバリズムの妄想に襲われた人間が、自分もいつかカニバリズムの犠牲となってしまうのではないかと恐れを抱くものです。これは当時の歴史を改めて調べ直してみると馬鹿にはできない恐怖であると思います。
 
 
魯迅は創作「狂人日記」の他に、自分のことを書いた「魯迅日記」というものを残しているので、今回はこれを紹介してみたいと思います。参考資料は【『魯迅日記』の謎 南雲智】です。
 
 
魯迅は1918年に狂人日記を発表して以来、儒教道徳と不安定な政治に抵抗して文学を紡いできて、アジアで最大の文学者とされているのですが、その作品の数についてはかなり少ないんです。短編小説だけを生涯で三十編ほど書いて、長編小説といえるようなものはありません。寡作の文学者なんです。魯迅はいったい何を主に書いていたかというと、海外文学の批評と翻訳が主なんです。翻訳です翻訳。そういえば魯迅は日本で医学を学んでいたという過去がありますし、海外から何かを得て帰ってきて、旧い体制を根幹から否定し、新しいものを作ると言うのが魯迅の基本的な思想のようです。
 
 
ところで、魯迅が日本のことをどう考えて日本にやって来たかというとですね、魯迅日記によれば、魯迅は「明治維新」について強い関心があったんですよ。魯迅はこの明治維新というものが多くの点で、西洋医学に端を発しているというように考えて、日本に医学を学びに来た、と自著に記しています。しかし医学を土台にして維新をなすというのは、それは甘い考えだったと後述しています。魯迅が異国から祖国へ持ち帰ったものは医学では無く「維新への信念」だったと、本人が書き記しています。革命ですね。魯迅は、清朝帝国の衰退を読み解いていて、新しい人々の思想について考えていた。
 
 
文学批評家の李長之によれば、魯迅は、悲哀や憤怒や寂寞というものを文学に昇華した、旧制度への注意深い批判者であるのだそうです。魯迅は子ども時代からぜんそく持ちだったそうで、これが原因で何度か大患に陥っています。そのような体質もあってか、魯迅は医者を目指したという過去があるんですが、祖国中国に帰ってからは、教育にも強い関心があり、1912年頃に教育部主催講演会の講師や、社会教育司第一科科長をしていたりします。国家の教育方針「孔子を基本とした国民教育」を批判し、美術教育の普及に努めたそうです。たしかに魯迅の作風は、孔子のように総合的体系的ではなくて個々人の情緒を重んじている。
 
 
魯迅が南京から日本に来たのは1902年です。今から110年ほど前。当時は日清戦争が終わったあとで、日本では工場生産という新しい時代が始まっていた。魯迅は日本語を学んで、ジュールベルヌの「月世界旅行」や「地底旅行」を日本語から中国語へ重訳していました。翻訳家の仕事をしながら海外文化を学んでいったようです。魯迅が文学者になることを決意したのは、日本で見た「日露戦争称揚」の幻灯に、自分たちがやすやすと殺されるような姿を見て、国家間の軋轢や差別ということを実感し、「せいぜい見せしめの材料とその見物人になるだけ」である自分たち自身の「心を入れ替える」ことを目指し小説を書きはじめた、と魯迅の「吶喊自序」に記されています。
 
 
ところで、魯迅は故郷の親族からしきりに帰国するよう求められ、かねてから婚約の約束があった朱家の朱安との結婚を迫られていました。魯迅は旧体制の国家に対しては強い批判を行ってきたのですが、親族や家族からの要請にはつねに従うという真面目な性格の男だったようです。親族から勧められるまま、許嫁の朱安と結婚するのですが、これには日本に居た魯迅が「ハハ、キトク」の電報を受けて中国へ飛んで帰ると、それはウソで、魯迅は朱安と結婚させられたというエピソードがあるんです。革新的な魯迅にとっては纏足や文盲などの旧いしきたりを守る妻に、かなり失望してしまったそうです。あらゆる言葉を使って交流することが大好きな魯迅に対して、妻はなにも読めなかったわけですから……。魯迅は妻の朱安と生涯「うまく話すことができない」ままでした。これが魯迅の絶え間なく続く寂寞を形成したようです。魯迅は結婚してすぐに東京に舞い戻ってしまった。そこで小説を書きはじめる。完成した本を売ってみるがまるで売れず、魯迅はがっかりしたそうです。いろいろと挫折する人生のようです。7年間の海外留学は失敗に終わるのです。しかしこの挫折のおかげで魯迅は作家となってゆくわけであります。
 
 
魯迅が祖国で大学の教員となって、許広平という女学生と不思議な交流が生じたのも、おそらくは古い妻と「うまく話すことができない」という挫折があったから、この新しい女性に心から引きよせられていったんだと思います。許広平は自由で活発な女性で、この女学生と手紙でやりとりしているうちに、魯迅は女子師範大学の学内紛争に強い関心を寄せはじめるのです。女の革命が魯迅を再び目覚めさせたのであります。許広平は魯迅大先生に恋をしていたそうで、魯迅の住み家を「秘密の巣」などと書いているんです。許広平との交流があった時期の1926年3月18日に、「三・一八事件」と呼ばれる、反帝国主義の女学生たちが祖国の人々を守ろうとして国務院に対して請願デモを行っている時に、軍警が一斉射撃をして若者たちを数多く殺してしまったという事件が起きました。日本の内政干渉に抗議する学生さんたちが同胞に殺されてしまったのです。許広平は偶然難を逃れたのですが、教え子たちを殺された魯迅は、強い怒りを感じていました。
 
 
このあたりの魯迅の人生を追った伝記については、くわしくは「魯迅日記」の翻訳をした南雲智というかたの本を読んでみてください。
https://www.amazon.co.jp/『魯迅日記』の謎-南雲-智/dp/4484962209
 
 
魯迅と許広平とその仲間たちは、この事件によって逮捕令が出されてしまいます。魯迅は逃亡者となるのであります。この後の魯迅には常に尾行がついてまわるというような状態であったそうです。文化的創造をする方というのは常に、危機と対峙しているのだなあと思います。魯迅は家族を残して北京から脱出します。魯迅がこの頃から求めはじめるのは、文明や社会に対する批評眼をもった若者の育成でした。魯迅は批評家として活躍しながら、許広平との恋愛を重ねてゆくのであります。老熟する作家・魯迅と、自由で進歩的な女・許広平。この2人の恋愛。この2人の個人的な手紙のやりとり。ぼくはこれをもっと見たいんだ、と思いました。……魯迅の元々の妻であった朱安は、魯迅と許広平の間に生まれた赤ん坊について、たいへんに複雑な心境でいたそうなんですが……。
 
 
ところで、魯迅の「狂人日記」には、人を食う悪い人間が居るという妄想が綴られているのですが、評論家のかたによれば、これは儒教道徳が人の生存を脅かしているということを表現するために比喩としてカニバリズムを表現したのだ、と記されています。たしかに魯迅は儒教道徳よりも、個々人の困難や悩みのほうを大切にして居るんだなということを感じました。
 
 
人を食う人など、世界中のどこを探してもごく限られた事件であるのみなんですが、なぜかこの作られた嘘が、現代に強く響いてくるように思いました。最後の一文がとても印象深いです。
 
 

 
 
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晶子詩篇全集(25) 与謝野晶子

 
 
今日は「晶子詩篇全集」その25を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 

今回の詩は、これまでの印象とちょっと違うなと思いました。ゲーテの箴言集でも読んでいる気分になります。小学校の校長先生が言った、ちょっと良いこと、みたいな詩までありますよ。同じ人が書いたものでも、編集の仕方が違うだけでずいぶん印象が変わったりするし、詩と短歌と小説ではイメージがだいぶ違ってくるような気がします。一部だけを切り取っているとイメージが違うんですよ。ふしぎです。「現実」という詩では、たしかに詩で現実的なことを言っています。

現実
 
過去はたとひ青き、酸き、充たざる、
如何(いか)にありしとも、
今は甘きか、匂はしきか、
今は舌を刺す力あるか、無きか、
君よ、今の役に立たぬ果実を摘むなかれ。
 
  
 
 

 
 
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