レ・ミゼラブル(25) ユーゴー

 

今日はビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル 第四部 叙情詩と叙事詩』

『第一編 歴史の数ページ』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。

 

前回、初恋の相手コゼットのゆくえを見失った青年マリユスは、まだ始まってもいないような恋愛の、失恋の苦しさによってですね、茫然自失となって本を読むことも、考えることも放棄してしまいます。
 
 
ところがですね、ある少女がとつぜんマリユスの家をたずねるんです。それは困窮する隣家ジョンドレット一家の者で、彼女はあまりの貧しさのために暮らし方が判らず社会も判らず働くことができずに、ものごいをしながら貧しさの中で生きつづけている。マリユスはこの、貧しさの中にあって奔放な少女の、さみしい話をぜんぶ聞いてから、なけなしのお金を渡してやるのでした。
 
 
マリユスは、隣人のたてるわずかな物音から、苦しい生活が目の前に存在していることを想像します。壁の向こうに住む、見えない住民を想像するマリユス。ユゴーのおもしろいのは善意ある主人公が、盗みだとか追跡だとか覗きだとかいうことを、あくまでも善意からどうどうとやってしまうというところだと思います。マリユスはこの少女と一家の暮らしがどうしても知りたくて、壁のすき間を探してですね、一家の暮らしをじっとのぞき見るんですよ。
 
 
そこには赤貧のためにおぞましい姿になりはてた一家のあるじがいるのでした。そこを訪れる慈善家。これが物語の主人公ジャンバルジャン(ルブラン氏)と、その義理の娘の少女コゼットなのでした。マリユスは覗き穴から、たしかに少女コゼットの姿を見て、あまりの喜びため、胸の動悸がおさまらず、めまいさえ感じるのでした。
 
 
ジャンバルジャンに育てられた少女コゼットの、そのまごころある所作にですね、のぞき見をしていた青年マリユスは感激してしまうのです。マリユスは感極まって、夜の街を去るジャンとコゼットを夢中で追いかけるのですが、馬車には追いつけず、哀れマリユスは街中で全てのものを見失うのでした。とんでもない恋愛感情ですね。中学生の頃にこれをちゃんと読んでおけば、異性の突拍子も無い行動の意味が、はっきりと理解できたのになあとか思いますよ。
 
 
それで悪夢のようなジョンドレット一家が悪人仲間とぐるになってわるだくみをしていて、このジャンとコゼットを地獄におとしいれようとしている。マリユスはあわてて警察に駆け込みます。
 
 
事情を聞いた警官がマリユスに「げんこつ」と言われる拳銃を手渡す。警視は「突入の合図に、銃声を鳴らせ」と言います。ワイルドです。この野蛮な警視。なんとはるか昔に窃盗犯だった慈善家ジャンヴァルジャンを追って追って追いつづけてきた、かのおそろしいジャヴェルなのであります。
 
 
ユーゴー小説の魅力の1つである、追跡劇というのがここにどんどんと加熱してゆき、あらゆる登場人物がなにかや誰かを追いかけます。そしておそろしい警視ジャヴェルは徹底して主人公ジャンヴァルジャンやパリーの悪漢たちを追いかけているのであります。
 
 
奸計をはりめぐらせたジョンドレットのあばら屋に、慈善家ジャンヴァルジャンがふたたび訪れる。それを待ち伏せていたジョンドレットは、黒い仮面をかぶり棍棒や斧を持った4人の悪漢を招き寄せる。これがパリーの奈落に巣くう、四人組のパトロン・ミネット盗賊団だったのです。悪鬼たちを追いはらわんとするマリユスは隣家でピストルを握りしめながらこれを見張っている。野外には警視ジャヴェル。
 
 
ジョンドレットは、ジャンヴァルジャンに自分の正体を明かします。ジョンドレットはじつは、幼児コゼットをこき使い、コゼットの母から金をむしり取って死なせてしまった、あの悪人テナルディエだったのです。元宿屋の主人で、幼児コゼットに悲惨な労働をさせていたあの男なんですよ。ところが、今は亡きマリユスの父にとっては、テナルディエというのは命の恩人であって恩義のある相手だったんです。
 
 
今まさに、強盗殺人が行われようとしているとき、その犯人がじつは唯一敬愛する父の命を救った恩人だった。マリユスは激しく葛藤し、興奮のあまり気を失いかけます。
 
 
ジャンヴァルジャン(ルブラン氏)は、テナルディエが強盗殺人を行おうとしていることを理解し、襲いかかる悪漢たちに一撃を食らわせます。しかし多勢に無勢で悪漢たちに取り押さえられてしまいます。この瞬間に、マリユスは我に返って合図の銃声を鳴らそうとするのですが、父の遺言がどうしても破棄できずに、警視ジャヴェルを呼ぶことができません。ジャヴェルはじつは、ジャンヴァルジャンの最大の敵なんですよ。だからマリユスは父の遺言を反故にしなくて良かった、ということになります。
 
 
そうして、悪漢テナルディエ(ジョンドレット)は、縛り上げたジャンヴァルジャンに、コゼット宛ての偽の手紙を書かせるんです。テナルディエはコゼットを人質にして、主人公ジャンヴァルジャンから20万フランを巻きあげようとしているんですよ。じつに悪い男なんです。この男を、主人公ジャンヴァルジャンとマリユスはどうするのか?! ジャンヴァルジャンは少女コゼットの隠れ家について明かさず、隙を見て縄を外し、焼け火鉢を手に仁王立ちします。
 
 
警視ジャヴェルはすでに、悪漢たちがこの巣窟に集結していることを察知しており、ここに突入します。テナルディエは銃を手に警視を撃つんですが、素人なので当たりません。かくしてパリーの悪漢パトロンミネット4人衆は、数多くの警官たちに逮捕されました。
 
 
ジャンヴァルジャンはこの警官たちをもくぐり抜けて、みごとこの巣窟と牢獄の世界から脱出を遂げるのでした。さて、テナルディエ一家はみなすべからく牢獄に入れられたのですが、たった一人、このパリーを徘徊する生き残りの少年が居るのでした。これで第三部マリユスが完結です。今回から、レミゼラブル第四部「抒情詩と叙事詩」がはじまります。

 




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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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