ゲーテ詩集(41) 生田春月訳

今日は生田春月訳のゲーテ詩集(41)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
ゲーテはほんとうに長生きしたんですが、途中で政治家もやっているんですよ。市長さんですよ。市長さんをやっているときに、あの作家ユーゴーもなぜか絶賛していた英雄ナポレオンと、ゲーテは会談をしていたりするんですよ。ナポレオンは若きウェルテルの悩みを愛読していて、戦場でさえも繰り返し読んでいたそうです。
 
 
くわしい人は当然知っていると思うんですが、知らないぼくとしては、ゲーテが政治家だったという事実に驚きました。ゲーテは多様な文学者だったんだなあと思います。いやでも、こんなすがすがしい詩を書いてから、それとはかなり反対側に居る政治に深く関わるなんておもしろいなあと思います。逆に牢獄に入っていながらすばらしい文学者という人はかなり居るんですが。大杉栄の獄中記とか、ユゴーの亡命中の執筆とか、永山則夫、小林多喜二……。政治に逆らって生きる人の文学をよくよみます。
 
 
しかしそういえば森鴎外という人も、軍人の要職をやっておきながらそれに対して否定的な文学者をやっていたので、歴史的に見れば、権力と文学に両方関わっていた人は多いのかも知れません。無知なぼくとしては、ゲーテが政治を翼賛する仕事をしていたことを知ってもうびっくりでした。探偵がじつは犯人だった、みたいな反則技の推理小説を読んだような気分になりました。だってゲーテはこう言うことを書いているんですよ。
 
 
支配したり服従したりしないで、それでいて何物かであり得る人だけが、ほんとに幸福であり偉大なのだ。(ゲッツ 第一幕から/高橋健二訳/ゲーテ格言集)
 
 
他にも、若きウェルテルの悩みでは、こう書いていますよ。
 
 
われわれは平等ではないし、平等ではあり得ないことを、ぼくはよく知っている。しかしぼくは、尊敬を受けるためにいわゆる下層民から遠ざかる必要があると信じている人間は、負けることを恐れて敵に姿を隠す卑怯者と同様に非難に値すると思う。(高橋健二訳/ゲーテ格言集)
 
 
めちゃくちゃ反権力的ですよ。他にも、国という枠組を否定するような、いかにも世界文学者らしい発言もあるんですよ。こんなのです。
 
 
愛国的芸術とか愛国的学問とか言うものは存在しない。すべて高尚な善いものはそうであるが、芸術や学問は世界全体のものである。(高橋健二訳/ゲーテ格言集)
 
 
って書いているんです。ゲーテは、ふつうの人々の自由な交流を通じ、過去から伝わっているものを絶えずかえりみることによってはじめて文化は成立するんだというんですよ。ゲーテの国家を賞讃する詩は、よく読んでみるとどうも移住を受け入れる国の存在を肯定しているようです。移住者にとっての善き国とはどういうものか、ということをゲーテが考えているようなんです。もうちょっとちゃんとゲーテの時代を調べてみたいなと思いました。
 
 
反権力的なゲーテと、権力の内部に居るゲーテと、ゲーテの抱える矛盾というのが最終的には、中期から晩期にかけて書き継がれていった「ファウスト」に結実しているんだろうなあと思います。
 
 
ゲーテは記します。
 
ひとつ処にぢつとすくんでゐちやいけない
元気よく出かけて行くがよい!
頭も腕も生々(いきいき)と力が籠もつてゐたならば
何処へ行かうと心のままよ
日に照らされて行くときは
どんな苦労も消えてしまふ
我等が気散じするために
世界はこんなに広いのだ
 
 

 
 
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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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