ゲーテ詩集(46) 生田春月訳

今日は生田春月訳のゲーテ詩集(46)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回でゲーテ詩集は完結です。次回から森鴎外が翻訳したゲーテの「ファウスト」を40数回にわたって紹介してゆこうと思います。この詩を翻訳した生田春月の、ゲーテに関する詩を紹介します。
 
 
ゲエテに寄す   生田春月 (生田春月詩集2 P223 より)  

朝影がほのかに窓に忍びよるとき、
わが机の上なる素焼の花瓶より
立ちのぼるフリジアの香りに漂うて、
夙くに消え失せた時代の面影が、
胸のとどろき、微笑み、静かな囁きが、
すぐれた生活の風景があたりに浮かびあがる。

ゲエテよ、あなたが展(ひろ)げて見せてくれる。
この心情の絵巻物に心を奪はれ、
この廣い世界に身を忘れて
かくて、幾夜も、春よりはつ夏まで
だんだん暁のあしの早くなるにつれて
わが筆は更に遅くなり、
おのが力の足らぬ歎きのみ
詩稿のかさばらぬのを補ふ如く積み重なる。

電燈の光と共に夜がのがれ去つて
窓掛のレエス越しに、窓の硝子越しに
朝の光がわたしの机の上に流れこみ、
目の前の狭い空地を蔽うて
鈍く白い空に織りなされた桐の葉が
わたしの疲労に影を投げる、
わたしはホツと溜息をついて
巻煙草に火をつける。

フリイデリイケ、リリ、ロッテ、ケエトヘン、
かくも多くの美しい名も
更に美しいその眼、その唇も
かつてこの人を囚へ得ず、
やさしい薔薇の紐さへ断ちきつて
世紀の動乱、内部の熱にも身を完(まつた)うし、
久遠(くをん)の女性(によしやう)に引き上げられし
おおフアウスト、汝を讃ず。

「ゲエテ詩集」を読了したる日
 
 

 
 
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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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