ファウスト(5) ゲーテ

今日はゲーテの「ファウスト」その(5)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ゲーテのかく物語は、犬が登場するだけでもうかっこ良いんですが、これはいったいなんなんでしょうか。森鴎外の翻訳文もかっこ良くて「犬」でも「イヌ」でもなくて「ファウスト狗(いぬ)を伴ひて入る」って書くんですよ。犬って書かずに「尨犬」(むくいぬ)です。かっこ良いなあーと思って読み進めていたら、その犬がじつは悪魔のメフィストフェレスだったというのが前回判明しました。
 
 
前回、ファウストは、惑いとともに聖書をひもといて語っていました。ファウストというのはゲーテがこの物語を書く以前から存在していた伝説上の錬金術師で、悪魔の力を借りる人間だという噂があった人だそうです。実在のファウストはwikipediaにも載っている人物なんですよ。


いっぽうでメフィストフェレスが登場し、四大精霊というのを召喚しておそろしい会議を行います。このあたりの魔術的な描写は、中高生向きのアニメやゲームなどで馴染みのものだと思うんですが、このゲーテのファウストが原典となっているのかもなあ、と思いました。ゲーテは「怪力乱神を語らず」ではなくて「怪力乱神をも語る」という感じで悪魔の世界を描いてゆきます。
 
 
メフィストフェレスは、老学者ファウストに自己紹介するんですが、ここがなんともすごい描写です。メフィストフェレスは自身のことを「常に悪を欲」するものでありながら「却て常に善を為す」存在の一部であり

「わたしは常に物を否定する霊(れい)です」

と言うんです。暗黒の一部分であると。そのメフィストフェレスが、この世の最上の体験をさせてあげましょう、と提案するんです。老学者ファウストはそこで「まあ、待て、お前は実に美しい」と告げたのなら、すべての終わりとして地獄へ連れ去られて良いので、それまでは私の要望をすべて聞くように、というルールを作ろうと言うのです。
 
 
聡明な学者のファウストがなぜこういう契約をしたかというとですね、本人は欲望を貪りたいのでは無いのだと言ってから、こう述べています。

  どんな苦痛をも迎えて、
  人間全体の受くるべきはずのものを
  この内の我で受けて味わって見よう。
  この己の霊で人間の最上のもの深甚のものを捉えて、
  歓喜をも苦痛をも————

体験してみたいのだと言うんですよ。なにかおもしろいなと思ったのは、じっさいに素晴らしい体験をさせるのにですね、悪魔メフィストフェレスはべつに瞬間にその幸福が実現するようなあり得ない魔法は使わないんですよ。「幸福を手に入れたいのなら、まずは出かけてみましょう」というひじょうに現実的なことを悪魔が言っていて、ここがなんとも軽妙で良いなあと思いました。ゲーテの自由な想像力と、限定された演劇空間という2つの世界が上手く共鳴して傑作が生まれているんだなあと思いました。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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