破戒(11) 島崎藤村

今日は島崎藤村の『破戒』その(11)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
 
島崎藤村はこの小説で、文化の断層をこう、露わに描きだしているんですよ。それは信州の選挙においても対立の要点となっている。差別問題の過去を持つ丑松は、その断層のところで悩んでいる。丑松は、ついに尊敬する猪子連太郎先生と別れて、肝心なことをまるで告白できぬまま、ぼう然とし、駅のホームに、木のように突っ立ったままでいる。
 
 
一人になるとけっきょく丑松は、自分は被差別問題があるのだから、新しい仕事場など探さず、父のようにこうしてずっと隠れて生きて、いつか異なる所へ出るための下積みをしていようと考えるのでした。
 
 
丑松は、幼なじみと遊んだ村を巡り、林檎の木を見つめながら、異性のことを思い、さまざまなことを懐かしむのでした。



 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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智恵子抄(8) 高村光太郎

今日は高村光太郎の『智恵子抄』その8を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
智恵子抄の印象深い言葉に「わがこころ」というのがあります。こんな使われ方です。
 
  こころよ、こころよ
  わがこころよ、めざめよ
 
平生ほとんど使わない言葉なんですけど、高村光太郎が書くと、詩の言葉になるんだなあー、と思いました。
 
  わがこころはいま大風の如く君に向へり
  そは地の底より湧きいづる貴くやはらかき……
  ……
  
  わがこころは君の動くがままに
  はね をどり 飛びさわげども
  つねに……
  ……
 
 

 
 
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破戒(10) 島崎藤村

今日は島崎藤村の『破戒』その(10)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
道中、丑松はやっと、猪子連太郎先生と差し向かいになれた。しかしながら、やはり丑松は猪子先生との、重大な繋がりについて、明言することができなかった。原文はこうです。

  『瀬川君、君は恐しく考へ込んだねえ。』と蓮太郎は丑松の方を振返つて見た。『時に、大分後れましたよ。奈何どうですか、少許すこし急がうぢや有ませんか。』
  斯う言はれて、丑松も其後にいて急いだ。

 
 
徒歩による旅路の、その風景描写がひとつひとつ詩のようで秀逸なんです。農業者から見た自然の様子であったり、あるいは花鳥を愛でるように自然界を描写していたりして、さまざまな角度から風景が描かれています。収穫に直結する土の質について描いていたり、自然界へのアプローチが多様で、これはほかの近代現代作家には見られない、島崎藤村の重大な特徴に思えます。
 
 
それから、父に致命傷を与えた牛の屠殺が行われる。作者の藤村は、父を明らかに尊敬していたわけですが、10代で亡くなったその父の葬儀に参列していないんです。しかしこの破戒という物語から漂ってくる父の葬送への思いはそうとうなもので、ぼくは作者の藤村がじつは、父の葬儀にさえ出ていない、というのはほんとに驚きました。なにかの勘違いじゃ無いかと思ったんですが、調べてみるとどうも、父の亡くなった頃、父がどのように生きていたかよく知らなかったそうです。息子を家の災難から引き離す狙いがあったようです。ネット上では今ひとつ情報が調べきれなかったので、こんどもうすこし詳しくしらべてみたいです。
 
 
今回、藤村自身がこの破戒を「過去の作品」だと述べ、もはや過ぎ去ったものだと記した理由が判るような、差別問題への描写を頑張りすぎて、かえって悪い表現になっているな、と明確に判るシーンがありました。屠殺にやってきた若者たちの描写のシーンです。気合を入れすぎてこのように書いてしまったんだろう……という文章が幾つかありました。
 
 
ドイツでは昔から、現代でも豚肉の解体を、こう街なかで、家族の居るところで、家長がこうのんびりと伝統的にやっていて、ソーセージを作ったりしているらしいんです。日本では、魚をさばくところあたりは、職人がとても美しくやるわけなんですけど、やはり豚や牛ともなると一般には隠す取り決めがあるように思います。
 
 
縄文弥生時代に狩りの時代から農耕の時代へと移って、明治から昭和のころに、農耕や漁や畜産だけの時代から、工業化の時代がはじまる。そこのところで激しい変化があった。その変化があらゆるところに噴き出してきたのが昭和初期の時代なんだろうなあ……と思いました。今回の、牛を屠るシーンは非常に印象深い、重厚な文体で描かれていました。
 
 
丑松はそれを見つめながら、父の生きていた時代から、その次の時代へと移り変わったことを、際限なく考えるのでした。今回の章は、ものすごい迫力でした。
 
 

 
 
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牛人 中島敦

今日は中島敦の「牛人」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
中島敦は、伝統的な文体と社会考察を用いながら、夢のように幻想的な物語を描いています。ある人生のはざまで起きたことと、夢とをこう、うまく混ぜ合わせて物語を展開しています。
 
 
人生の節目で、謎の女と契った叔孫豹しゅくそんひょうという男。それから、黒い牛にそっくりな、謎の経歴の少年、豎牛じゅぎゅう。この二人をとりまく家来たち。この3者の物語です。危機に対峙してゆくのが文学だ、という話を聞いたことがありますが、まさにこの作品は怖ろしいことをじっくりと丁寧に描いています。寄る辺ない一人者の、不忠と生存を描いています。なかなかに暗い、しかし魅了される物語でした。
 
 
あと、この名作にはyoutubeで朗読がありましたので、読みたいのに読み終えられなかった方は、こっちで全文聞きおえてみてください
 
 

 
 
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破戒(9) 島崎藤村

今日は島崎藤村の『破戒』その(9)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回は、丑松のめぐる古里の描写が秀逸です。
 
 
作者の藤村は10歳の頃、古里から去るように父から命じられ、それで東京の学校で学び、東京の女学校で先生となり、二度と古里へは戻らなかった、という経歴を持つのですが、不思議なことに、藤村は終生、古里のことを詩や小説で描くことに熱心だったんです。
 
 
主人公の丑松は、9歳の頃に親しかった幼なじみの少女に再会する。心情の変化がじつに鮮やかに記されていて、100年以上前に書かれたものに思えない鮮度で、衝撃を受けます。
 
 
なんと言うんでしょうか、対象への距離感というのが絶妙だから、ここまで真に迫ってくる描写になっているんだと思うんです。作者は江戸時代の遺物とも言うべき被差別問題の直接経験をしているわけでは無いので、ある程度主人公を突きはなして見ることができる。しかし作者の父の無念や挫折は、この丑松の苦悩と共通しているわけで、そこに嘘が無い。これは……すごい文学だなあー、と思いながら読んでいます。

 
丑松は、猪子先生と風呂に入っている。しかし、けっきょく丑松は、自分の出自が猪子先生と同じ苦の中にあったということを、告げることができなかった。猪子先生は、大金目当てに結婚をすることにした高柳を、そのうえ出自を隠させて結婚をするというのを批判しているんです。どうも藤村は、弱きを助け強きを挫く、というような古いところがあるようで、そこもまた魅力なんです。
 
 
苦悩の中に、異性のおもかげがサッと入りこんでくるところに、藤村ならではの文学性があるなあ……と思いました。
 
 

 
 
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智恵子抄(7) 高村光太郎

今日は高村光太郎の『智恵子抄』その7を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
 
今回の「梟の族」という詩の、毒々しくも静けさに包まれた雰囲気が、とても印象に残りました。
 
 
……
のろはれたるもの
梟の族、あしきともがらよ
されどわが心を狂ほしむるは
むしろ……
……
 
 

 
 
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破戒(8) 島崎藤村

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今回はちょうど物語の中盤です。父は出自を隠せと言って他界した。尊敬する猪子先生は、それを前に前に出して、差別の問題を徹底的に描きながら生きている。
 
 
その猪子先生が、丑松の留守中に、丑松の滞在する親戚の家を訪ねてくれた。そこでは父の遺言に従って、かつての部落での習慣を隠すことによって、平穏を保っていた。ぼくはこの習慣をまったく知らないのですが、その出自の村では、明治時代よりももう少し昔の頃には普通ならお茶を出さないはずだった、というんですよ。おそらく江戸時代に禁令が出たかどうかして、お茶を出さない習慣が残ったのであろうと思うんですが、この問題の歴史考証は自分は知らないもので、事実がどうなっているのか自分には判断ができませんでした。喜田貞吉という学者の評論を読んだところによれば、江戸時代には茶を出せないどころか、町での飲食やごく普通の立ち話さえ、江戸幕府に縛られていた武家によって禁じられていたという事実は確認できました。しかし、これはそのずっと後の時代ですから、また藤村の時代には異なる社会状況があったように想像されます。
 
 
かつては差別問題があって茶を出せなかった。しかし引っ越しをして、新しい暮らし方をするようになって、そういったもろもろの習慣を身につけていった、と藤村は書いているんです。そのような過去を思いだして、伯母は茶を汲む指先が、震えてしまう。
 
 
あのー、フランスの哲学者フーコーは当時、禁忌とされていた同性愛者で、それでそのことを表に出せずに、そうとう悩んでおって、それで新しい哲学を創る原動力にもなったそうで、島崎藤村は、それとはまた異なる禁忌をどこかに抱えていてこのように重厚な文学を描くようになったんだろうなあ……と、空想しました。
 
主人公は古里について悩み尽くしているのに、その古里に帰ると、なにもかも心安らぐという逆説の描写に、じつに普遍的な文学性を感じました。
 
 
丑松は、尊敬する猪子先生に再会して、自分の出自が、猪子先生と同じ苦の中にあることを言おうとする。しかし、なぜだかそれを告げることができなかった。原文はこうです。
 
 
  秘密――生死いきしににも関はる真実ほんたうの秘密――仮令たとひ先方さきが同じ素性であるとは言ひ乍ら、奈何どうして左様さう容易たやす告白うちあけることが出来よう。言はうとしては躊躇ちうちよした。躊躇しては自分で自分を責めた。丑松は心の内部なかで、おそれたり、迷つたり、悶えたりしたのである。
 
 


 
 
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