それから(12) 夏目漱石

今日は夏目漱石の「それから」その12を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
代助は、東京を出て旅に出るつもりでいると、父から呼び出しを受ける。それを抜けだしてどこか遠くへ行くつもりでいるのだが、やはり平岡夫婦が気がかりで、もう一度会いに行った。
 
 
平岡は夜分遅くまでどこかへ出かけたままで、三千代ただ一人だけが居た。代助は三千代に、生活費のほうは大丈夫かと、聞く。すると三千代は、裸になった両手を見せるのだった。指輪もなにもかも、どうも手放さざるを得なかったほど、まずしいようである……。
 
 
代助は、これを受けとってくれといって、紙幣を三千代に手渡した。相手は困ったような、助かったような、じつに微妙な応対をしている。その状況描写が秀麗なんです。トルストイの「復活」冒頭部分を意識して書いたのでしょうか。
 
 
薔薇の香水、というのが代助の手もとでいくたびか登場するんですが、洗練された印象を受けるんです。明治の貴族的な社会というのか、現代の純文学の原形そのものというか、美くしい小説だなあと思いました。
 
 
代助は、兄や父から逃げようと思っていたのだが、やはりつかまってしまって、結婚に相応しそうな娘たちを紹介される。代助は結婚すると働かざるを得ないから、そんなことをしたくない。いつまでも0円の働きで、優雅に生きていたいという、男なんです。
 
 
代助は、兄と父から金をもらっているもんだから、思っていることを、ありのままに言うわけにもいかない。それで、娘たちにかんして、じつにあいまいなことばかりを言っている。ここがどうにも面白かったです。
 
 
ぼくはこの小説は、幽霊として居る正岡子規に、親友として漱石が、今からでも結婚をする未来を勧めたく、このように奇妙な構造の物語を書いているのだ、と思えました……。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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