門(14) 夏目漱石

今日は夏目漱石の『門』その14を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
あのー、80年代のバブル時代から90年代の就職氷河期に至ったころの時代の変化と、漱石が「門」で描きだしている宗助夫婦の人生観の変移は、そうとう共通項が多いと思うんです。本文にこう書いているんですよ。
 
 
  宗助は相当に資産のある東京ものの子弟として、彼らに共通な派出はで嗜好しこうを、学生時代には遠慮なくたした男である。彼はその時服装なりにも、動作にも、思想にも、ことごとく当世らしい才人の面影おもかげみなぎらして、たかい首を世間にもたげつつ、行こうと思うあたりを濶歩かっぽした。彼のえりの白かったごとく…………………
 
 
それで、金にものを言わすことがなくなった宗助夫婦はどういう考え方をするようになったのか、本文には「都会に住みながら、都会に住む文明人の特権をてたような結果に到着した。」と書かれ、またこうも記されます。
 
 
  外に向って生長する余地を見出し得なかった二人は、内に向って深く延び始めたのである。彼らの生活は広さを失なうと同時に、深さを増して来た。
 
 
また、漱石にしてはずいぶん嘆美な表現の文章もあります。こういうのです。
 
  彼らはむちうたれつつ死に赴くものであった。ただその鞭の先に、すべてをやす甘い蜜の着いている事をさとったのである。
 
 
これらの時代の変化は、21世紀初頭の現代にも、たしかに起きていることなんだと思いながら読んでいました。
 
 
ところでこの14章には、レンガ造りの建物でエレヴェーターがついている、そういう新しいビルというのが、100年前にもうすでに存在していたようで、そういう描写があります。ちょっと驚きました。
 
 
この章で、宗助の友人の安井のことが詳しく書かれ、そして彼の恋人こそが、今の伴侶である御米だという事実が記されます。宗助は彼と彼女の関係性に、違和感をおぼえる。そこから、御米となぜか親しくなってゆく。歯がゆいような、奇妙な過去の回想なんです。不倫の罪についての描写があって、これはどの時代であっても不変の心情のように思えました。
 
 

 
 
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