ゴリオ爺さん(8) バルザック

今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(8)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ウージェーヌ・ラスチニャックは、いろんな人たちから好まれている好青年だということがこの章で描きだされているんです。「パリでは恋人同士で、愛の言葉をささやき合う」というのは何度も聞いてきて知っていたことなんですけど、バルザックと、この小説の登場人物たちは、人々の未来について祝福を送るんですよ。
 
 
むかし、子供向けというかなんというか、呪いの小説をしょっちゅう読んでいたんですけど、本場の文学では祝福について様々に記しているんだなと思いました。
 
 
人をカエルのようにしてしまう黒魔法は誰でも簡単に使えて会社でも学校でもいつでも日常的に行われているけど、カエルになってしまった者を元の王子様に戻せる白魔法は、そうかんたんに使えるものじゃない、って話しをどっかで読んだことがあるんですけど、バルザックの書く小説はまさにこれだなと思いました。
 
 
海賊のごとき悪道を歩んできたヴォートランまでもがこんなことを言うんです。
 
 
  「おやすみ、子供達」ヴォートランはウージェーヌとヴィクトリーヌの方を振り向いて言った。「私は君達のために神の加護を祈る」
 
 
一方で、ヴォートランは怖ろしいことを宣言してきた。ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢の唯一の親族が決闘をして不幸になり、もうすぐヴィクトリーヌにとほうもない大金が転がりこむだろうという、不気味な未来を宣言してきたわけです。ウージェーヌ・ラスチニャックはこのあまりにも正確すぎる予言に青ざめている。今回、ゴリオ爺さんの日本語訳小説を読んでいて、翻訳の文体の魅力というのがだんたん理解できてきたんですよ。普通に書いたのなら、こうはならないと思うんです。
 
 
おそらくフランス語と日本語を母国語のように使える人なら、フランス語でバルザックを読んだほうが楽しいんだと思うんですけど、日本語しか読んだことのない自分としては、一度文章をまるごと書き直したような、二重の行程を経ている、この翻訳の文体に魅了されました。
 
 
極めて知的な人の論文は何を書いているか分からないですよね。でもその知的な人がラジオで話していることは、すごくシンプルでわかりやすく興味深いってことがよくあります。最終的に自分たちにも分かりやすい言葉で書き直しているという、その翻訳作業の丁寧さによって、独特な魅力が生じているんだと思うんです。
 
 
ヴォートランの不吉な予言は当たり、じっさいにヴィクトリーヌ嬢に大金が転がりこんでしまった。学生ウージェーヌ・ラスチニャックは、ヴォートランの勧める恋人との未来と、ゴリオ爺さんの勧める恋人との未来とで、どちらを選ぶか、たいへんに惑い、最後のところで……つづきは本文を読んでみてください。 
 
 
どうもやはり、ヴォートランは暗黒世界の権力者らしく、警察はその証拠である、肩の焼き印を暴こうとして、ヴォートランにあるものを飲ませた。ヴォートランは、ついに肩の焼き印を暴かれたわけですが、このままヴォートランは沈黙の中で去りゆくのか、あるいは……、というところで話しは次回に続きます。
 
 
ウージェーヌ・ラスチニャックは、自分のやっているのはいっさい不倫でも浮気でもないと考えている。正式に離婚するように相手と談判をし、離婚を終えてから結婚しようと考えているし、2人の女性と限界を超えて親密なのも、えー、まあとくに浮気だとは考えてない。うーむ、現代社会の実態とだいぶ違う……と思いつつ読んでいました。
 
 

 
 
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢………主人公たちとおなじマンションに住む、かつて孤児だった悲しげな目の美少女。母は亡くなり、父とずっと会えぬまま生きてきた。
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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山羊の歌(10) 中原中也

今日は中原中也の「山羊の歌」その10を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回のは、ゲーテのファウストを彷彿とさせる、みごとな詩でした。なんだかこう、理解することを不可能にする、論理性から解放された一文があって、ある程度判る文章との混じり合いが絶妙だなと思いました。判りやすい文体も好きなんですが、どう読んでも意味を理解できない詩の言葉があると、なんだか魅了されます。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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握った手 坂口安吾

今日は坂口安吾の「握った手」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
読書の魅力は、今の自分と無関係なことを、じっくり見てゆけるところにあると思うんですけど、この小説も興味深かったです。
 
 
坂口安吾が、小説の形式で、若者の恋愛について記しています。坂口安吾にしてはずいぶん初々しい青年を描きだしていて、珍しい作品のように思えました。松夫という青年は、異性にけっして言うべきで無い、ごく小さな問題について繰り返し思考しています。いきなり手と手を繋いでしまったことについて、自分の恋愛感情は俗悪だ、と、考える青年の物語なんです。安吾は、二人の異性に気持ちをかたむける青年の心理を、こう記します。
 
 
  水木由子の手を握った自分の手がケダモノの手のように考えられる。思いだすと赤面せずにいられない。そして、思いだすことが怖しくて、その怯えだけで冷汗をかいた。水木由子は扉にはさんだ手をひきぬくような真剣さで抵抗した。
 
 
なんだか、以下の描写が身におぼえがあるなと思いました。
 
 
  「アナタ、ちかごろ気がぬけたみたいよ。時々フッと消えてしまうみたいよ。ふりむけばちゃんといるでしょう。つまり、アナタ、しょッちゅう放心してるんだわ」「そうでもないです。就職もダメだし、試験もダメらしい。気がめいることが多いので、ついね」彼は仕方なしにヘラヘラ笑って答える。自然に敬語で答えていたりするのである。
 
 
前半部分はどうも、坂口安吾らしくないやと思って読んでいたんですが、後半はやっぱり安吾の迫力が滲み出してきます。本文にこう書いて、ありました。
 
 
  …………こう考えるのよ。永遠の大学生。ステキじゃない」「永遠の三下と同じ意味だね」「よく知ってるわね。悪い方、悪い方へ智恵がまわりすぎるのね。人生は表現の問題だわ。明るく生きよ。詩に生きよ」
 
 
このあとの、女たちの言葉のかずかずが、秀逸でした。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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ゴリオ爺さん(7) バルザック

今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(7)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
謎の人物ヴォートランは、どうも「ツーロン徒刑場から逃亡した」大悪党の可能性が高く「“不死身”の名で知られている男」らしいのです。「不死身」は元囚人たちのボスで、闇稼業を営んでいる。闇の資産運用が主な仕事なんです。
 
 
警察は、ヴォートランこそが大悪人の「不死身」ではないかと睨んでいる。もし不死身ならば、肩に、元囚人である証拠の、焼き印が入っているはずで、これを暴くために、ミショノー嬢は、スパイの仕事を任され、彼を酔わせ、肩の焼き印を発見せよというミッションを与えられる。
 
 
とうのヴォートランは、天然な性格の学生ウージェーヌ・ラスチニャックという若者がたいへんに気に入ってしまったようで、自分の闇家業と、暗い権力と、闇の資金の大半を授けてやろうと画策している。さすがのウージェーヌ・ラスチニャックも、これは自分の理想の正反対だと理解して、ヴォートランからの提案に青ざめているんです。
 
 
さらにはゴリオ爺さんは、娘の結婚は失敗であったと考えて、彼女を吝嗇家の夫から救い出し、天然男ウージェーヌと再婚させようと計画している。これはこれで、かなり実現の難しい願望ですよ。
 
 
老いた男たち2人で、若者ウージェーヌ・ラスチニャックを奪いあおうと躍起になっているんです。どうして、彼らはウージェーヌ・ラスチニャックを好むのかといえば、彼が正直者で瑞々しく、娘たちを心から喜ばせるから、のようなんです。
 
 
ウージェーヌ・ド・ラスチニャックはタイユフェール嬢と、なにやら親密な会話にふけっている。その時の彼らを見た脇役のセリフが、あまりにもみごとでした。こういう本文です。
 
 
「あの人達一生懸命色目使いあって、この八日間、魂を奪われたみたいだわ」
 
 
外からウージェーヌの恋愛をみると、まるで馬鹿をやっているようにしか見えないのが面白くてしょうがない。メゾンヴォーケではもはや、あらゆる奸計が渦を巻いて、住民たち全てを巻きこんで、宴会が催されている。
 
 
「彼女はウージェーヌ・ド・ラスチニャック氏を愛するという罪を犯してしまったわ。そして、それがどんなことになるかも知らずに大胆に前進している。可哀想に何も知らないで!」
 
 
とうのウージェーヌ・ラスチニャックはこう思ってます。本文こうです。
 
 
  彼は自身の良心に問い続け、自分が悪を行ってきたことを自覚し、なおも悪を行うことを望みながら、一人の女性の幸運にすがって自身の小さな罪を償おうと考えていたのだ。彼女の目に彼はその絶望感により内面的美しさまでにじませ、彼が心の中に抱く地獄の炎のによって一段と光り輝いて見えるのだった。
 
 
不倫と浮気の泥沼の描写が、ほんとに魅惑的なんですよ。これ……こんな蠱惑的な物語があったのかと、衝撃を受けました。文体がほんとうに見事なんですよ。浮ついた心をさんざん描写しておきながら、今不幸な彼女には、未来の幸福が確約されていることを、語り手はさりげなく宣言する。
 
 
野心家で明るく、そして正直者であるウージェーヌを、ヴォートランもゴリオ爺さんも狙っている。何とかして彼を家族に組み入れたいわけです。ゴリオ爺さんはウージェーヌ・ラスチニャックに結婚をすすめ、新居まで用意したと告げてから、こう言うんです。
 
 
  そこでの貴方は、まあ王子様ですな。私達は貴方に、まるで花嫁のためのように家具を揃えましたよ。この一ヶ月、私達はずいぶんなことをやりました。
 
 
ゴリオ爺さんの望みは、娘にみずみずしく楽しい日々を営んでほしいということなんです。それには天然な性格で、正直者のウージェーヌがどうしても必要になる。
 
 

 
 
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢………主人公たちとおなじマンションに住む、かつて孤児だった悲しげな目の美少女。母は亡くなり、父とずっと会えぬまま生きてきた。
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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山羊の歌(9) 中原中也

今日は中原中也の「山羊の歌」その9を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
この前、ある映画論を読んだんです。数十年前の日本映画でもっとも売れた作品は、自然界との共存や対峙を描きだしているところが、現代日本人の自然への畏敬の念を呼び覚まし、環境破壊をもたらしたことの罪悪感と共鳴して、巨大な共感を生んだのだという話しが書いてありました。
 
 
同じ映画がアメリカであまり売れなかったのは、どうも自然と都市の境界地域というのが、アメリカには少なくて、手つかずの自然か、機械的農園か、都市か、という区分けが明確だから、自然との共存感覚があまり理解できないのではないかという推論が書いてあって、たしかに日本の住み家は、自然界にすこぶる隣接している地域が多いんだよなと、思いました。
 
 
日本には自然界とのマージナルマンがいっぱい居る、のだ、と思ったんですが、近代文学の世界だとしかしむしろ、自然界しきゃ無いような気もするんです。漱石は都会的な作家で都会の人間性を描きだしているので、現代日本とも通底していると思うんですけど、中原中也はもっと、自然界の中で生きたんだろうな、と思う詩が多いです。
 
 
ただ今回の詩を読んでいて「つひに私は耕やさうとは思はない!」という記述があってとても印象に残ったんですけど、中原中也には、自然との共存を果たせなかったという、都市空間と自然のあわいに生きる者としての意識が、あるんではないかと思いました。
 
 

 
 
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常に自然は語る 小川未明

今日は小川未明の「常に自然は語る」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
つい最近、自然界からすこし遠のいたところに引っ越してしまって、毎日のように見ていた川をもうほとんど見られない、というのが残念で、自然観察ができない代わりに、近代文学の自然界描写を読んでゆきたい、と思っています。
 
 
小川未明は、雲を仔細に観察して、これを言語化しています。文体にはこだわらず、とつとつとした文章で記された随筆なんですけど、それにしても描写が詳らかですごいんです。
 
 
何十年もかけて言葉を読むことが出来るようになったんですけど……小川未明のように言葉を自由に書ける人は、まあ世の中にほとんどまったく居ないんじゃ無かろうかと思うくらい、未明は雲の美しさを多角的に描きだしています。ことばってじつは、ここまで奥の方まで描けるんだなと……驚きながら読んでいました。俺の使っている言葉と、なんだかぜんぜんちがう……と思いました。
 
 
自然界の流露りゅうろとしての表現は、民謡や伝説の中にこそある、と小川未明は言います。未明はこう記します。
 
 
   私は、民謡、伝説の訴うる力の強きを感ずる。意識的に作られたるにあらずして、自然の流露だからだ。たゞちに生活の喜びであり、また、反抗、諷刺である。
 
 
  彼等が、これを口ずさむ時は、生活の肯定であった。支配者に対する反抗であった。しかも、また、自らの作業をはかどらせるための快い調でもあった。故に、喜びがあり、悲しみがあり、慰めがある。そして、狭小、野卑の悪感を催さない。なぜならば、これ、一人の感情ではなかったゝめだ。郷人の意志であり、情熱であった。これを、土と人とが産んだものと見るのが本当であろう。
 
 

 
 
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ゴリオ爺さん(6) バルザック

今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(6)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ウージェーヌ・ラスチニャックは、ゴリオ爺さんのもう一人の娘(デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人)と、急接近してゆく。
 
 
どうもこうバルザックは、社会問題と恋愛を密接に絡めて考察しているようなんです。暗い人が身なりを整えるときにそれはどうしても控えめになる。その恋愛描写の細部からバルザックは「悲歌は基本的に不精なところがあり、熱狂的叙情詩は案外苦労性な本質を持っている」という芸術への考察に転じています。あ、たしかに絵画でもそういうことはあるような気がしました。なんだか途中で彩色を辞めてしまったような、哀れにかすれてしまった筆跡が、唯一の魅力を持つ絵画について、連想しました。
 
 
主人公ウージェーヌ・ラスチニャックは、富豪のニュシンゲン夫人だけでなく、かつて孤児であったタイユフェール嬢のことが気になっている。ここから先、前科者の焼き印を持つ地獄の住人の如きヴォートランが、ウージェーヌをさらなる別の恋とアブク銭の世界へと引きずり込もうとするんですが……もうめくるめく物語展開なんです。いったい何人の女と付きあいたいのかようわからんのですが、彼はそれから、高級車……ならぬ高価な馬車で豪邸へ向かうので、ありました。
 
 
夫人はやっぱり、恋多き人なのか、不倫でも良いから恋がしたいのか、自分の悲哀を、主人公にさりげなく訴えるんです。「もし貴方がいなくなってしまったら、私は一人ぼっちになります」とか「これは家庭内の喧嘩ですから、心の内に秘めておくべきものですわ。一昨日も私、このことは貴方に話さなかったでしょう? 私って、これっぽっちも幸せじゃないんですよ。金の鎖なんて重苦しいだけですよ」と言うんです。美しく、若くて、愛されていて、金持ちの夫人なのにです。
 
 
ウージェーヌ・ラスチニャックはもう、不倫かどうかなんてまったく気にしていない。こんなことを平然と言ってしまう。「私は貴女を完全に私のものにしたいんです」ウージェーヌが言った。「貴女は魅惑的です」
 
 
どうして、言いたいと思っていることを言えるんだろうかと。これは小説だからなのか、フランスだからなのか、革命のあとだからなのか……。夫人はこう言います。
 
 
  「ここでは何も貴方に不幸を感じさせない、だけれども、その見かけにかかわらず、私は絶望の中にいるんです。私の悩みごとのためによく眠れないんです。お陰で私はきっと醜くなってしまうわ」
「おー! そんなことはあり得ません」学生が言った。「しかし、私には分からないのですが、献身的な愛ですら癒せないような悩みとは一体何なんですか?」
「あー! もし私が貴方にそれを打ち明けたら、貴方は私から逃げ出してゆくでしょう」
  
 
主人公は、こう告げるんです。
 
 
  もし貴女に悩みがおありなら、それを私に打ち明けてください。私はただ貴女その人を愛していることを貴女に証明して見せたいのです。
 
 
それからウージェーヌ・ラスチニャックは、夫人から願われたとおりに賭博場で賭けをして、夫人の資産を何十倍にもしてしまうのでした。悪魔的な物語展開で、ゲーテのファウストを連想させる強運が描きだされます。
 
 
このあとの夫人の告白が、衝撃でした。夫人は豊かな資産を持っているはずなのに、それらを男に奪われ、借金をしながら生きねばならない、ひどい状況に追いやられていたんです。年金暮らしで畑があって自給自足の老夫婦は、お金をほとんど持ってないけど、困らない。いっぽうで大金を遣り繰りしている都市の若い夫婦は火の車のようになって、さらにはいくつもの不倫の罪を背負いつづけ、金に困苦している、という現代的な問題が隠されているのでした。
 
 
夫人はやっと借金を返せて、これからは素朴に生きるんだと、思うのでした。
 
 
バルザックが描きだす、夫人と主人公のキスの描写が二転三転してとってもおもしろかったです。ウージェーヌ・ラスチニャックは明るくて軽薄だけど、どこか正直者なんです。これが曰く言いがたい魅力を生じさせています。
 
 

 
 
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢………主人公たちとおなじマンションに住む、かつて孤児だった悲しげな目の美少女。母は亡くなり、父とずっと会えぬまま生きてきた。
 
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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