兜 岡本綺堂

今日は岡本綺堂の「兜」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
震災のあとに聞いた、不思議な噂話のことが描きだされています。
 
 
邦原家の住み家が、地震の被害にあってしまったんですが、古い兜だけが傷一つなく残った……。それをわざわざ避難先に届けに来てくれた、謎の女が居た。美しい怪談みたいな始まり方です。
 
 
作中に出てくる、大正12年の震災というのは、これは関東大震災のことです。(ちなみにwikipediaには寺田寅彦の当時の随筆が引用されていました)
 
 
どうやって災害の最中で、この兜だけが無事で、持ち主に戻ったのか謎なんです。謎を追っているうちに、盗んだ者と、届けてくれた者の2人が関わっているはずだと推理する。
 
 
そのうちに、話しが、江戸末期の物騒な世の中で、その兜がどのように世を流浪していったのかが、描きだされる。江戸末期と言えばすでに兜など身につけないわけなんですが、その男はなぜか、鉄の兜だけをかぶっている奇妙な姿であった。その兜の男に夕暮れの辻斬りが切りつけた。兜はこの渾身の一太刀を、なぜか跳ね返していた。ふつうなら割れていておかしくない。
 
 
さらには辻斬りの男も不明で、脇役の出し方や、話しの変転が妖しくてすてきな怪談なんです。兜はくりかえし、謎の女に運ばれて、顔の見えない賊に盗まれてゆく。
 
 
時間が少しずつさかのぼってゆくのが秀逸なんです。因果の因が起こった時代へとするするとさかのぼってゆく。
 
 
ふつう、怖いものは、汚さとか不快さを伴うはずなんですが、この岡本綺堂の「兜」はなんだかきれいに怖いんです。自分にとっては新体験の、不思議な物語でした。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
http://akarinohon.com/letters/okamotokabuto.html
(約50頁 / ロード時間約30秒)
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