神曲 地獄(29) ダンテ

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今日はダンテの「神曲 地獄篇」第二十九曲を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ダンテは神曲地獄篇をとおして、罪人たちの悲劇を描きつづけているんですが、二十八曲と二十九曲の前半部では、完全に戦争そのものの描写が続きます。それで、どうもダンテが戦時中にいったい具体的にどういうように恐ろしい目にあったのかどうしても知りたくて、いろいろ調べてみました。ダンテはフィレンツェ軍(=グェルフィ党=ローマ教皇勢力=教皇派)に所属しており、アレッツォ軍(=ギベリーニ党=神聖ローマ帝国=皇帝派)との戦争、カンパルディーノの戦い(1289年)に騎兵隊員として参加し、そのすぐあとにダンテの所属する教皇派は、悲惨な内部分裂をひきおこします。ダンテは白党の三人の統領のうちの一人に選出され市政を担っていたのですが、1301年に黒党のクーデターが起きます。ボニファティウス8世というのが内紛を扇動して、ダンテが所属する白党(フィレンツェの自立を求める富裕市民たち)に対して、教皇を宗主とする封建貴族たち(黒党)がクーデターを起こします。
 
 
ダンテはある日、白党を代表して、ローマの教皇庁に自分たちの立ち位置を説明しにゆく旅に出ます。これが運命の旅立ちだったのです。ダンテはその旅の途中で、「内紛が起きて白党が失脚した」と伝えられます。ダンテは犯罪者とされてしまうことを拒絶します。最後には永久追放とされ、フィレンツェに戻れば、火刑に処されるということになってしまった。ダンテの仲間たちは罰金を払ってフィレンツェに復帰したものもいるのですが、ダンテは生まれ育った家を破壊され、政治犯となって北イタリアを長らく放浪し、完全に孤立し「一人一党」を述べるようになります。そうして生涯ふるさとのフィレンツェに戻ることができませんでした。
 
 
ダンテの孤独を救ったのは、古代ローマの古典文学と1300年も前に生きた詩人ウェルギリウスです。このウェルギリウスは、神曲のもう一人の主人公で、ダンテを導く師として登場し続けています。ダンテが神曲を描きはじめるのは1307年で、1318年ごろにラヴェンナに安住し、そこで神曲の完成を目指し、約3年をかけて書きあげます。そのすぐあとの旅で運悪くマラリアにかかり亡くなってしまいます。この貴重な14年間がもし存在していなければ、ダンテはその後世界中で語りつがれることは無く、ただただ失意の中、元政治犯として亡くなっただけという生涯だったわけです。
 
 
ダンテは戦争のことを思い出して、物語にこう書き記します。あまたの人々が受けた生々しい傷あとは私をもうろうとさせ、その眼に涙をたたえさせる。師ヴィルジリオ(ウェルギリウス)は私にこう告げる「おまえはいったいなにを見ている? なぜおまえは、魂をみじめに切りきざまれた地獄の底の人々ばかりを見ている。ほかのボルジヤではそうではなかった。我々に残された、地獄の時間は残り少ない。この他にもまだ、お前が見るべきものはあるのだ」山川訳はこうです。
 
 
多くの民もろ/\の傷はわが目を醉はしめ、目はとゞまりて泣くをねがへり
されどヴィルジリオ我に曰ふ、汝なほ何を凝視るや、何ぞなほ汝の目を下なる幸なき斬りくだかれし魂の間にそゝぐや
ほかの嚢(ボルジヤ)にては汝かくなさゞりき、もし彼等をかぞへうべしとおもはゞこの溪周圍二十二哩(ミーリア)あるをしるべし
月は既に我等の足の下にあり、我等にゆるされし時はや殘り少なきに、この外にもなほ汝の見るべきものぞあるなる
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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