神曲 地獄(34) ダンテ

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今日はダンテの「神曲 地獄篇」第三十四曲を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ついに神曲地獄篇の最終話です。地獄の帝王というのが登場します。最後の地獄は、恩を忘れて裏切りを行った者たちが氷づけにされているのですが。ダンテは、最大の悪の中心にあるものを、いったいどのように描くのか、非常に興味があったのですが、これはほんとに圧倒されました。
 
 
山川訳がまたすばらしくて、ダンテはこの悪の中央に居るものを、「昔姿美しかりし者」とまず記すんですよ。これにしびれました。聖書には、この悪魔の帝王ルシファーについて、このような表記があります。
 
 
「あなたは全きものの典型であった。知恵に満ち、美の極みであった。」
新改訳聖書 エゼキエル書28章
 
 
これが悪そのものの中心に居座ったものへの記述なんです。ダンテはこの悪の帝王をこう描きます。
 
 
彼今の醜きに應じて昔美しくしかもその造主にむかひて眉を上げし事あらば一切の禍ひ彼よりいづるも故なきにあらず
 
 
そうして、容貌はあたかも阿修羅のごとく三つの顔で、朱を注いだように赤い。山川訳はこうです。


我その頭に三の顏あるを見るにおよびてげに驚けることいかばかりぞや、一は前にありて赤く
殘る二は左右の肩の正中の上にてこれと連り、かつ三ともに鶏冠あるところにて合へり
 
 
ユダプルートカシウス・ロンギヌス(カッシオ)がこの悪魔の王に噛み砕かれています。師ウェルギリウスは、こう告げます。我々は悪のすべてのさまをついに見た。もはや地獄を去る時だ。
 
 
「されど夜はまた來れり、我等すでにすべてのものを見たればいざゆかん」
 
 
それから師によって、地獄からの脱出方法が示されます。とてつもなく巨大な魔王の、その毛むくじゃらの脇腹にしがみついて登ってゆき地獄を抜けるというのです。
 
 
哲学者のウィトゲンシュタインは、自身の哲学「論理哲学論考」について、穴にはまり込んで動けなくなってしまったものへのハシゴとしてこれを用意したのだと述べ、私の哲学について理解をし終えたものは、それを登りきったあとでそのハシゴを取り払ってしまわなければならない、と述べました。その哲学について理解し終えたものは、この哲学自体をも無意味なものだったとして捨て去って、あらゆるものによりかからず、自分の生へ向かってくれと述べているのです。ウィトゲンシュタインは聖書と哲学を非常に重大視した人なので、これはもう明らかに、ダンテ神曲地獄篇のことを想起しながら記したんだろうなと思いました。ダンテはこう記すんです。
 
 
魔王の巨大な背に、かたくしがみつけ。かような絶望の悪からは、かようなハシゴを登りきって立ち去らねばならぬのだ。
 
 
師とダンテは、ついに魔王の背を登りきり、地獄の底からの脱出を遂げるのです。ダンテは重力の強烈な変化に圧倒され、その脱出の経路がなんであったかを捉えきれずにいます。そこで師が世界の成り立ちについてダンテに教えます。ここら辺の描写はどうも、プラトンの「洞窟の比喩」のようで興味深かったです。ついに師とダンテは地獄から抜け出し、ふたたび地表を歩み、夜の空を見上げます。山川訳はこうです。
 
 
かくてこの處をいでぬ、再び諸々の星をみんとて
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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