婚期 林芙美子

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今日は林芙美子の「婚期」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
この作品は、「放浪記」や「新生の門」などの作品で有名な林芙美子の、ちょっとした掌編小説で、じつに事実っぽい家族の物語を書いているわけなんですけれど……これは実話の要素はたぶん少ないようで、どうも創作された小説のようです。ある家の、末の妹の結婚について記しています。作中に事変ののちに、と書いているので、おそらく1933年〜36年ごろのことを書いているんだと思うんですけど、妹は、近所の年上の女と親しくしていて、4回も縁談を持ちこまれていた。上海の銀行で働いている男との縁談が持ち込まれたとき、もひとつ下の末の妹が、きゅうにこの人と結婚したい、と言いはじめた。
 
 
むかしは、ご近所さんと親しくしていると、良い結婚相手がみつかりやすかったのかあ、と思いました。今は自由恋愛か結婚相談所か、でしかありえないと思うんですが。むかしのご近所さんと、今のご近所さんは意味がぜんぜん違うように思いました。
 
 
この、結婚相手をとっても薦めてくれた興田さんという女の人は不思議な人で、小説といえば夏目漱石ばっかり読んでいたそうです。漱石はいっけん男社会ばかりを描いている気がするんですけど、女性読者の層が、当時も現在も、すこぶる厚いんだなと再認識しました。
 
 
漱石の草枕を少し引用したあとで、こんなに体躯の良い人が、軍隊に入らないなんて不合理だ、という描写があって、まさに草枕の結末の真逆の事態を考えている世間一般の人々の心情をまのあたりにしたように思いました。その後の戦争末期に於ける男たちの未来のことを想像し、ぞっとしました。
 
 
未来のだんなさんの写真を見ながら、姉妹でたわいもない話しをしているのは、じつにこう、印象深かったです。ふつうの出来事の細やかな描写に、読み応えを感じました。
 
 
上海で不幸があり、それから産まれた赤ん坊をひきとったおばあさんの姿と、それと結婚せずに残った妹の静かな姿がまた、十五年戦争の時代とは思えない、暖かい描写でした……。結末も鮮やかです。ただ、戦争を翼賛する時代のもので、戦後にはあまり読まれなかった作品なのかな、と思いました。
 
 

 
 
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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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