三四郎 夏目漱石(7)

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今日は夏目漱石の「三四郎」その(7)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
三四郎は、万年のんきなままの高校教師、広田先生にあう。三四郎にはいろんな焦りがあって、まず将来の居場所が定まらない。うまくゆきそうなものが何かもわからない。
 
 
広田先生はじつにいつでも昼行灯で、「弱る」ということさえちっともしていない。そういう人になってみたい、と三四郎は思っている。
 
 
マンガで言うとバカボンのパパとか、哲学で言うと老子の世界に近いんではないかと思いました。
 
 
漱石の考えなのか、それとも広田先生の考えなのかよく判らないんですが、作中でこういうことが書いてあります。

  …………………………みんなひと本位であった。それを一口にいうと教育を受けるものがことごとく偽善家であった。その偽善が社会の変化で、とうとう張り通せなくなった結果、漸々ぜんぜん自己本位を思想行為の上に輸入すると、今度は我意識が非常に発展しすぎてしまった。昔の偽善家に対して、今は露悪家ばかりの状態にある。

  …………………………露悪家同志がお互いに不便を感じてくる。その不便がだんだん高じて極端に達した時利他主義がまた復活する。それがまた形式に流れて腐敗するとまた利己主義に帰参する。つまり際限はない。我々はそういうふうにして暮らしてゆくものと思えばさしつかえない。
 
 
なにかこう、戦時中の坂口安吾の、露悪もしないし偽善もしないで自分の考えを通すという、他人との距離のとり方が壮絶な作家のことを思いだしました。露悪という言葉は、漱石がどうも、この物語で作った言葉のようです。漱石は、均衡がとられずに、利他主義に傾くときと利己主義に傾くのに、大きな波があるのがこの日本の特徴で、イギリスは伝統的に元からこの両派がずっと居るので、化石のように動かないんだ、と書いています。ずーっと慈善をする強固な団体と、悪態をつきつづけるだけの人生の人とがこうずっと居ると言う感じなんでしょうか、よく判らないんですが。そういう社会では変化が発見できないから、ニーチェやイプセンが生まれてこないのじゃ、と漱石は書いています。
 
 
日本には波がある、というのは、たしかに現代の日本でも、そうな気がしました。
 
 
三四郎は、広田先生のご高説を聞きながら、じゃあ美禰子はいったい、どういうことを考えて生きているのかを探ろうとする。彼女は正直にやっているのか。それとも演技でそれっぽく見せているだけで考えていることはほとんど真逆だったりするのか。広田先生の考え方で相手の心境を読み解こうとする。しかし判らない。
 
 
本を読みながら、じゃああの人はどういう考えを持っているかを空想する、というのは面白いやり方だなと思いました。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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