破戒(9) 島崎藤村

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今日は島崎藤村の『破戒』その(9)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回は、丑松のめぐる古里の描写が秀逸です。
 
 
作者の藤村は10歳の頃、古里から去るように父から命じられ、それで東京の学校で学び、東京の女学校で先生となり、二度と古里へは戻らなかった、という経歴を持つのですが、不思議なことに、藤村は終生、古里のことを詩や小説で描くことに熱心だったんです。
 
 
主人公の丑松は、9歳の頃に親しかった幼なじみの少女に再会する。心情の変化がじつに鮮やかに記されていて、100年以上前に書かれたものに思えない鮮度で、衝撃を受けます。
 
 
なんと言うんでしょうか、対象への距離感というのが絶妙だから、ここまで真に迫ってくる描写になっているんだと思うんです。作者は江戸時代の遺物とも言うべき被差別問題の直接経験をしているわけでは無いので、ある程度主人公を突きはなして見ることができる。しかし作者の父の無念や挫折は、この丑松の苦悩と共通しているわけで、そこに嘘が無い。これは……すごい文学だなあー、と思いながら読んでいます。

 
丑松は、猪子先生と風呂に入っている。しかし、けっきょく丑松は、自分の出自が猪子先生と同じ苦の中にあったということを、告げることができなかった。猪子先生は、大金目当てに結婚をすることにした高柳を、そのうえ出自を隠させて結婚をするというのを批判しているんです。どうも藤村は、弱きを助け強きを挫く、というような古いところがあるようで、そこもまた魅力なんです。
 
 
苦悩の中に、異性のおもかげがサッと入りこんでくるところに、藤村ならではの文学性があるなあ……と思いました。
 
 

 
 
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「破戒」登場人物表
 

 






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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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