破戒(19) 島崎藤村

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今日は島崎藤村の『破戒』その(19)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
天然ボケのイケメン銀之助は、もう明日には新しいところへ旅立ってしまう。丑松はもはや男友だちがいない。お志保は因果な寺を脱走して、雪の中を歩いて行ってしまった。尊敬する猪子先生が自分の住む村にやって来たのだが、差別を怖れて逢いにゆくこともむつかしい。
 
 
そのー、なぜ丑松が苦しめられたかというと、当人が知らない間に、政治闘争に飲み込まれた、というのがこの章でかなり明らかになっているんです。たしかに現代でも政治的対立という名目で、そうとうえげつない人格攻撃がやられているわけで、高柳の行動も理解不能ではないなと思いました。
 
 
丑松のつらいのは、政治には初めからいっさい関わっていないのに、この闘争に巻きこまれている、というところなんです。世界でもっとも有名なディストピア暗黒世界小説といえば、やはりジョージ・オーウェルの『1984』だと思うんですけど、これも軍事や管理や愚民化政策という政治闘争そのものからくる拷問と洗脳の凄惨さが描かれているもので、それから現実に、文学者の小林多喜二が特高に捕まり拷問で殺されてしまったというのも、政治思想に関わる主張そのものが、権力との対立の主因となっていたわけで……若菜集で美しい自然を描いた藤村が、こういう政治と対立を真正面から描くというのが、とにかく衝撃でした。
 
 
丑松はもう、なんと言うんでしょうか、伴侶と連れ添って、異国へ旅立てば良いのに……、と思いました。因襲を捨てて別の世界で生きられる能力が確実にあるわけですから、もう出ていくしかないんじゃないかと、藤村はこの『破戒』の改訂版というのを作っていて、それはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に倣ったのか、主人公の異国への旅立ちを描いているんですよ。アメリカに旅立つんですよ。彼は別の世界で、自由に生活する。それをできるだけの、能力があるわけです。れっきとした先例があるんだから、そこに目標を絞って、政治に占領された苦しい生き方から、二人で脱出したら良いんだと、そういうように思いながら読んでいました。
 
 

 
 
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「破戒」登場人物表
 

 






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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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