今日は島崎藤村の『破戒』その(21)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
あと数回で、破戒は完結です。高柳はけっきょく逮捕され、猪子先生とは別れ、丑松は自分一人だけになった。藤村は、厳しい生まれの先生が居た、という実話を聞いて、ここまで克明に想像を広げた。どうして藤村はこんなにリアルに悲劇が書けるんだろうかと、考えていたんですけど、どうも藤村はじっさいにそういう印象を文壇の中で持っていたんでないかと思いました。
藤村の前の時代の近代文学者を調べていると、樋口一葉が1895年(明治28)ごろに活躍して、正岡子規が1898年(明治31)ごろに新聞連載している。それから尾崎紅葉が三十五歳で、あまたの門下生を残していった。藤村がこの物語を書きはじめる前に、時代の移り変わりがあった。藤村はそういう文壇の移り変わりを、学校と村の出来事に転じていって凝縮して、この作品で描きだしている気がします。
いまいちこう上手く表現が出来ないんですけど、藤村は偽りなく自分の実感を描いているように思いました。作家は他人の感性を描きだすもんだと、よく評論で読むんですけど、藤村の自然主義文学は、明らかに藤村自身の実感を、異なる環境の主人公に投影しているように感じました。
藤村の、飯の描写はなにかこう、餓死が深刻だった時代の、食への執念を感じて、印象に残るんです。原文はこうです。
其日にかぎつては、飯も焚きたての気の立つやつで、汁は又、煮立つたばかりの赤味噌のにほひが甘さうに鼻の端へ来るのであつた。小皿には好物の納豆も附いた。其時丑松は膳に向ひ乍ら、兎も角も斯うして生きながらへ来た今日迄を不思議に難有く考へた。あゝ、卑賤しい穢多の子の身であると覚期すれば、飯を食ふにも我知らず涙が零れたのである。
丑松は、父の遺言を破って、猪子先生の生き方を選ぶんです。丑松の告白を聞いた幼い生徒たちは、ちゃんとものごとを理解したんだという展開があって、じつに良かったです。ぜひいつか、原文で読んでみてください。
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「破戒」登場人物表
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ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
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