それから(7) 夏目漱石

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今日は夏目漱石の「それから」その7を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
湯上がりに、ぼうっとして自分の体を見つめているうちに、自分の足が、自分の足のように思えなくなる、という描写がじつに文学的でした。これを発展させたら、カフカの『変身』になるなあと思いながら読んでいました。
 
 
高層ビルで暮らして、静音の車を運転し、PCモニターの前で延々仕事をして、良い服を着て生きているうちに、自分が毛の無いチンパンジーとほとんど同じ形をしている生きものだという事実を忘れてしまう。
 
 
あのー、漱石の小説は、現代でも大人気でものすごい数の人が読んでいるのに、現代映画になりにくいのは、方向性が多様で、濃密な、物語の繁りかたをしているからなんじゃないだろうかと思いました。
 
 
映画はなんというか、じつは情報量というか方向性が少ないほうが名作になってゆく感じがするんですよ。じっさいある映画監督は、30分くらいでじゅうぶん描ける物語を2時間に引き延ばせたら名作になる、と言っていますし。映画の原作として成立する、映画的な小説もそうだと思うんです。
 
 
それにたいして文学の場合は、1つの小説の内容が数多で、いろんな方向性を持っていて、濃く繁っているほど名作になっている気がします。文学者が、抽象的な装画を好んだり、装画を簡素にしたり、装画のない装幀を好むのも、1作の中で多様な方向性をもたらそうとしているから、なんじゃないかと思います。映画の場合は、ポスターで、1つの印象深いシーンを刻みつける、というのが主流だと思うんです。
 
 
漱石は、主人公代助がいつも気になっている平岡の妻の、その兄を描いて、さらにその母を描き、そこから夫を描いていて、とにかく意識を多岐にわたらせています。その記憶と家系を辿るときにも、上野の森を描いたりして、とにかくあらゆるところに眼差しを向けているんです。

 
今回の小説は、『吾輩は猫である』に比べて、文体が手馴れてきていて、あきらかに簡素に作っているんですけど、それでもやっぱり、文学の深い森というかんじの物語になっているんです。代助は、三千代を援助するために、こんどはあによめに借金を申し込もうとしたが、とうぜん返すあての無い借金は、無理であった……。
 
 
代助はこのまま生きれば、未来がどう進展するか、判らない状況です。嫂と代助との、話し合いのオチのところがみごとで、やはりここに、正岡子規との親交の記憶が色濃く刻まれているように思いました。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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