門(4) 夏目漱石

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今日は夏目漱石の『門』その4を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今日は七夕の日なのに、暗い場面を紹介することになってしまいました。えーと、少しずつこう、この小説の魅力が現れてきたんです。小説の中で、真の事情がまだ隠されている、ということは、ほんとうによくあることで、むしろ事情がぜんぶまる見えなんてことは、現実世界でも物語世界でも、めったにないことですよ。それにしても今回の「門」は、ほんとに、見えないところでどういう事情が進行しているのか、気になりました。
 
 
物語そのものとほとんど関係無いんですが、作中のこの記述に、自分のいつも考えていることが、代弁されている……と思いました。
 
 
  「人間一人大学を卒業させるなんて、おれの手際てぎわじゃ到底とても駄目だ」と宗助は自分の能力だけを明らかにした。
 
 
宗助夫婦は、ある事情があって、広島や福岡で、二人きりで貧しく暮らしていた。それが縁あって東京で忙しく働けるようになった。作中に叔父と叔母である佐伯夫婦の言葉が、こう記されています。
 
 
  「宗さんはどうもすっかり変っちまいましたね」と叔母が叔父に話す事があった。すると叔父は、「そうよなあ。やっぱり、ああ云う事があると、ながくまであとへ響くものだからな」……………
 
 
宗助の10歳年下の弟「小六」はほとんど身寄りがなくなってしまって、それで小六を佐伯に育ててもらうために、宗助は佐伯に大金を預けた。それが日本の年金みたように、株にまるごと投資して先の株価暴落みたいな事が起きて何兆円と消え去ってしまったのと似た展開で、大金がごそっと無くなってしまった。
 
 
小六という10代の青年を援助するのは、ふつうなら父が担当するわけですがそれがとうの昔から居ないのです。小六への責任と担当というのが、あいまいすぎたので学校に通えなくなりそうで尻切れとんぼになってしまっているんです。これは漱石がじっさいに、親子関係があいまいであった幼少時代が影響しているようで、読んでいてとても納得のゆく描き方なんです。
 
 
宗助夫婦は、なんだか奇妙に、静まりかえっているんですよ。不思議なこう、描写をするもんだなあと思いながら読んでいました。本文に、宗助夫婦のことを、こう書いています。
 
 
  苦しい世帯話は、いまだかつて一度も彼らの口には上らなかった。と云って、小説や文学の批評はもちろんの事、男と女の間を陽炎かげろうのように飛び廻る、花やかな言葉のやりとりはほとんど聞かれなかった。彼らはそれほどの年輩でもないのに、もうそこを通り抜けて、日ごとに地味になって行く人のようにも見えた。または最初から、色彩の薄いきわめて通俗の人間が、習慣的に夫婦の関係を結ぶために寄り合ったようにも見えた。
 
 
  そうして二人が黙って向き合っていると、いつの間にか、自分達は自分達のこしらえた、過去という暗い大きなあなの中に落ちている。
 
 
「門」は、苦みのある小説の、代表例のように思えてきました。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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