選挙に対する婦人の希望 与謝野晶子

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今日は与謝野晶子の「選挙に対する婦人の希望」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回は選挙の話しなんですけど、つい先日の参議院選挙がなんだか興味深くて、選挙前の市民運動とか、選挙後のいろんな人の発言をツイッターなどで読んでいて、とっても勉強になりました。
 
 
それで、今回スイスの政治制度というのを知ったんですけど、これがおもしろいんですよ。スイスでは、党議拘束というのがほとんど存在しないんです。日本の政治家は、党議拘束というのがあって与党議員がクビを恐れて党首の方針だけが全てになってしまっている。日本の一人一人の与党議員に話しを聞くと、「ほんとは他国の戦争に日本が派兵するのは反対なんだ」とか「原発の新造には絶対に反対」とか言っている。しかし、採決時には必ずビッグボスの言うことを聞くしか無い。政治家なのに、離党する覚悟が無い限り、党首への賛成票しか投じられないんです。
 
 
スイスの場合は、自分が考える政策に基づいて、議員が単独でそれぞれ判断する。スイス公共放送協会国際部と在外スイス人協会の記述によるとスイスでは「特定の問題では議員は党路線よりも個人の見解に基づいて票を投じる傾向にある」と記されています。またツイッターでも、スイス人に話しを聞くと、「党議拘束はスイスではありえない」と言っているそうです。なので、政治家が政策をちゃんと持って、論理的な議論でもって法令を決められる。あたりまえの事態なんですが。
 
 
それでもう1つ現代政治で気になったのは、党首が違憲立法を通しちゃった後に、どうするのかという問題です。ドイツやイタリアなどでは、憲法裁判所というのがちゃんとあって、違憲立法はちゃんと即時にごみ箱に捨てられて、違憲政治は実現不可能になっている。アメリカでも同様に、違憲の法を廃棄できる仕組みがある。日本は、もうご存じの通り、極限の違憲政治をやりたい放題です。日本でも、裁判所の違憲審査権と違憲審査制は確立できるはずで、これをやってゆかねばならない状態のようです。つい最近までの日本では、じっさいに害が出てから、裁判所がそのつど後処理として判断することになっていました。それでぼくの現代政治社会に対する意見は、憲法改正などをする以前に、憲法裁判所が最大の違憲立法を無効化できるような、そういう状態にもっと近づけなければならない、ということです。
 
 
それから「憲法は、人々が国家に命令するもの」で「法律は、国家が人々に命令するもの」というものすごく基本的なことを、もっとNHKなどが広く、繰り返し論じて、人々に理解してもらう必要があるような気がしました。「お酒を飲んだら、車を運転しちゃいけない」というのは車を運転する人の99%以上が知っていると思うんですよ。「憲法は、人々が国家に与える命令」ということも投票権を持つ人の99%以上が知っている必要がある気がします。
 
 
与謝野晶子は、第一文目から、この憲法と法律の完全なる違いについて、明晰に指摘しています……。選挙と人権に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。与謝野晶子が記す「個人として」という言葉に、なんとも言えない力を感じました。
 
 
与謝野晶子は、女性の参政権が確立していない時代に、政治に関して、こう記しています。
 
 
  …………
  それなら政治については黙して忍ぶかというに、幸なことには文書を以てする政治上の言論だけは私たち婦人にもその自由を認容されております。これがために私たちは政治的に隠忍して奴隷の位地に落ち込むことをわずかに免れております。私たちはこの辛うじて開かれている唯一の窓を利用して、此処ここから出来るだけ政治その他の生活機関に対する私たち婦人の希望を述べねばなりません。
 
 
この評論は、一九一七年二月二七日頃に発表されたものですが、20数年後の未来を的確に言い当てているのがすさまじいと思いました。本文にこう記されています。
 
 
  盲目的感情は婦人の所有する所といわれておりますけれども、婦人の感情的妄動は自己と少数の周囲とをわざわいするに過ぎませんが、男子(官僚と党人との政争や、寺内正毅総理や軍部など)のそれは幾百万の人類を殺傷し、幾百億の財力を消耗し、幾千年来の文明を一朝にして破壊します。…………
 
 
与謝野晶子は、財力で喧伝している金持ちや偽りだらけの候補者を当選させるなど、あってはならないことで、何よりも政見があって、知識と思想に裏打ちされた論理的な人物を選んでほしい、というのでした。与謝野晶子は、「聡明な個人主義」こそが政治に適切に反映される社会を望んでいる、と述べています。この指摘が、30年後の戦後日本に通底しているもので、なんだか衝撃でした。この文章が印象に残ります。
 
 
  私は敢てこの小さな窓から全日本人に問い掛けます。我々は今こそ真実の個人の権利を以て生きようと自覚すべき時機ではありませんか。………
 
 
終盤の文章が、なにかこう現代社会に響いていて、すこぶる良いんですよ。与謝野晶子や選挙に、ちょっと興味があるという方は、ぜひ読んでみてください。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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