門(7) 夏目漱石

FavoriteLoadingお気に入りに追加

今日は夏目漱石の『門』その7を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
季節はもう冬になっていて、宗助夫婦は静かに暮らしている。すると崖の上の隣家から、ピアノの音や話し声や、笑い声が聞こえてくる。
 
 
宗助はもう、他人がどのように裕福でも、嫉妬心も抱かず、枯淡なのかなんなのか、感覚が霧消してしまっている。ただ、崖の上の家のできごとだけは、なんだか気になる。
 
 
とくになにも起こらない日常の描写が続くんですけど、それがシンプルに、読んでいて楽しいんですよ。こう、モーリス・ラヴェルのボレロでもじーっと聞いているように、文体の美しいのを見ているだけで、充分に、なんというんでしょうか、文学読んでるなあーと思います。
 
 
妻の御米は、真夜中に、じつに奇妙な音を聞く。あまりに気になるので、宗助を起こして、あの物音はなんなのだ、と言う。本文はこうです。
 
 
  「音は一遍したぎりなのかい」
  「だって今したばかりなのよ」
  二人はそれで黙った。ただじっと外の様子を伺っていた。けれども世間はしんと静であった。いつまで耳をそばだてていても、再び物の落ちて来る気色けしきはなかった。
 
 
崖の上から、なにか大きなものが落ちてきた、というのです。しかしあたりは静まりかえっている。御米は、どうも真夜中に眼が冴えてしまうようなのです。朝になって、宗助がその崖を見にゆくと、こうなっていた。
 
 
  …………ちょうど自分の立っている縁鼻えんばなの土が、霜柱をくだいたように荒れていた。宗助は大きな犬でも上から転がり落ちたのじゃなかろうかと思った。しかし犬にしてはいくら大きいにしても、余り勢が烈し過ぎると思った。
 
 
どうも、昨晩の物音は、崖の上の家に、泥棒が入ったらしい………。盗人が落としていった盗品を、宗助は崖の上に届けにゆくのでありました。主人は裕福で、盗まれたことをまるで気にもしていないんですよ。この不可思議な人物描写が好きになりました。
 
 
宗助の家のまわりに、夏になると咲く、秋海棠しゅうかいどうというのは、こんな花です
 
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/mon07.html
(約30頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら   (横書きはこちら)
 

 






明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


Similar Posts:

    None Found