映画の語る現実 宮本百合子

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今日は宮本百合子の「映画の語る現実」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
宮本百合子はパールバックをこの随筆で、紹介しています。宮本百合子によれば、アメリカが映画で、中国をちゃんと描くことが出来たのは、このパールバック原作の映画「大地」がはじめてのことで、この原作は特別なんだ、と言います。
 
 
これほんと、読んでて興味深いんですよ。プロの読みってやっぱすごいなあ……、と圧倒されました。要所要所であらわれる、満面の笑顔というのが、原作とまったくその意味を異にしていて、それは阿蘭を演じる女優ライナーの辿ってきた人生の、明るさによるもんだと言うんです。本文はこうです。
 
 
  あの笑いの瞬間に横溢する感情表現は、阿蘭の全生涯の歴史が別に書かれて来ているのでなければ阿蘭の体と顔とに現れ得ない美である。俳優としてよりむしろライナーの富、華麗、社交性、女としての日常性があすこで一閃するが如き強烈な印象を与えるのである。映画全体として、これは一つの大きい破綻のモメントである。
 
 
ほかにも、大地という映画には「時間的感覚の欠乏」があって、そこには「芸術と現実との歴史的な問題がかくされて」おり、それに思い至らせるほど、この映画は傑作なんだと説いています。
 
 
しかし日本映画に対する作家としての不満は多々あって、ある小学校を追った日本のドキュメンタリー作品に対して、ただキレイに撮っているだけで、まったくこう内実が隠されていると。本文には、こう記されているんです。
 
  ……………児童の生活というものは、映画の画面の奇麗さのために工合のいい光線のある秋や五月の晴天だけに在るものだろうか? 冬の寒いとき、そして最も日本的な梅雨のふりつづくとき、撮影もしにくい光線と湿気との中で、ゴム長靴マント姿の学童たちの生活はどのように営まれているか。
  
  ……………交通事故の防止のために市が子供らに払っている注意、子供ら自身の身につけている訓練。それらの点は何故撮されなかったのであろう。……………そういう、現実的な部分が全くカメラからとりこぼされている。
 
 
これを読んで、この個人ブログ記事のような個々から発信されるものは、かつての映像作家たちの取りこぼしてきたものを、ちゃんとこう、表に出す力があるなあ、と思いました。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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