門(11) 夏目漱石

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今日は夏目漱石の『門』その11を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
御米は身体がよわくて、寝込んでしまっている。漱石は、病の描写がリアルだと思うんです。漱石と言えば、この「門」を書いている1910年の、修善寺の大患というのが有名なのですが、それ以前にも病にかかっていて、1900年のイギリス留学のころは、神経衰弱に悩まされて、この門を書いている前後数年間には胃潰瘍に悩まされているんです。
 
 
あとやっぱり、漱石の親友の正岡子規が、病床六尺を描いているので、漱石は中期以降、自身の病について描いてゆこうという意識が強まってゆくんだと思うんです。今回の第11章が、その漱石文学の重大な転換点のように思えました。
 
 
今回、寝込んでばかりの御米に対する描写が美しいんです。病苦に対してこうも静謐に描ける人は、他に居ないと思われます。一部だけ抜き出すとその魅力は半減してしまうと思うんですが、こういう本文です。
 
 
  小六が薬取に行った間に、御米は「もう何時」と云いながら、枕元の宗助を見上げた。よいとは違って頬から血が退いて、洋灯ランプに照らされた所が、ことに蒼白あおじろく映った。宗助は黒い毛の乱れたせいだろうと思って、わざわざびんの毛を掻き上げてやった。そうして、
「少しはいいだろう」と聞いた。
「ええよっぽど楽になったわ」と御米はいつもの通り微笑をらした。御米は大抵苦しい場合でも、宗助に微笑を見せる事を忘れなかった。
 
  五六時間ののち冬の夜はきりのようなしもさしはさんで、からりと明け渡った。それから一時間すると、大地を染める太陽が、さえぎるもののない蒼空あおぞらはばかりなくのぼった。御米はまだすやすや寝ていた。
 
 
おそらく、この前後の、医者の落ちついた様や、宗助の熱心な看病のその場面の強弱がこう、美しい描写を深めているんだと思われます。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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