ゴリオ爺さん(3) バルザック

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今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(3)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
学生ウージェーヌ・ラスチニャックは、社交界の花形であるレストー伯爵夫人の豪邸を訪れた。そこにはやっぱりゴリオ爺さんが居たのであります。どうもゴリオ氏はレストー夫人と何らかの関係があるようなんです。
 
 
文体がやっぱりこう、手品師のような方法論で、華麗なんですよ。ちょっとしたデマをはりつけてミスリードさせてからすぐにそのウソを撤回する、という畳みかけるような書き方で、読んでいて面白いです。
 
 
前半の会話のほとんどが、まなざしと、語り手のその意味の解説で決してしまっているのもなんだかすごいですよ。テレビ番組で実況者がとんちんかんなことを絶叫している構成に、似ているかもしれません。どう考えてもレストーの妻に恋心を抱いている美青年マキシムにたいして、レストー伯爵という男前は、むしろ本気で笑顔でいられる。その事実を知って、貧乏学生ウージェーヌ・ラスチニャックは衝撃を受けるんですが、語り手はこう書いています。
 
 
  田舎から出てきた若者は、社交界の人々にとって三角関係がいかに甘美なものであるかを知らない。
 
 
ほんとかよ! というかフランスの小説では、人妻が浮気の一歩手前のお付き合いをしていて良いのかと。修羅場じゃ無くて甘美なシーンなのかよ、と突っ込みどころ満載の小説になっているんです。
 
 
青年独特の、ちょっと物騒な話題も出て来るんです。それで調べてみると、バルザックはフランス革命後とナポレオン後の社会を生きていて、ナポレオンが剣で実現できなかったことを自分はペンで実現するのだ、とか書いていたそうなんです。流血と混乱ののちの、市民たちの物語なんだなあと思いました。
 
 
この物語が現状、どのように進行しているかを的確に記した箇所があったので、紹介します。本文にこう書いています。 
 
 
  ウージェーヌが言った。「私は貴女主催の舞踏会でド・レストー夫人に魅了されました。私は今朝、彼女の家を訪ねてきたのです」
「貴方が押しかけて行って、彼女結構困ってたでしょ」ボーセアン夫人は微笑みながら言った。
「えーと! そうですね、私は間抜けなもんだから、貴女が助けてくださらないと、皆から嫌われるようなことばかりやってしまうでしょうね。…………
 
 
それでけっきょくは、ゴリオおじいさんのじつの愛娘こそが、あの華麗なレストー夫人であることが判明するので、ありました。この親子を評したボーセアン夫人の言葉が、印象に残りました。
 
 
  ……親父は総てを与えてしまったわね。彼は二十年間にわたって、心の総てを、彼の愛を、与え尽くしたの。彼は一日にして、彼の財産も与えてしまったの。レモンは十分に搾り切られ、彼の娘達は、その皮だけを道端に捨てて立ち去ったのよ。
 
 
また、こうも言っているんです。
 
 
  貴方は女達の腐敗がどれほど深いかを測り、虚栄に満ちた男達の悲惨の大きさも目の当たりにすることでしょう。
 
 
  もし貴方が本当の感情を抱いたなら、それは宝物として隠しておきなさい。決してそれを感づかれないようになさい、でないと貴方はそれを失くすわよ。それから、貴方は処刑人にもならないこと、でないと貴方が処刑される人間になってしまうわ。もし貴方がまだ本当の愛に出会ったことがないなら、当面は貴方の秘密はしっかりと自分一人で守りなさい! 貴方が心を打ち明けられると十分確信出来る人に出会うまでは、秘密は決して……………………
 
 
夫人は「騙される方にも、また騙す方にも」入るな、と主人公に言うのです。フランス革命の動乱の最中になくなっていった人びとへささげられた物語でもあるのだろうか、と思いました。
 
 

 
 
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(約100頁 / ロード時間約30秒)
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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