ゴリオ爺さん(7) バルザック

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今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(7)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
謎の人物ヴォートランは、どうも「ツーロン徒刑場から逃亡した」大悪党の可能性が高く「“不死身”の名で知られている男」らしいのです。「不死身」は元囚人たちのボスで、闇稼業を営んでいる。闇の資産運用が主な仕事なんです。
 
 
警察は、ヴォートランこそが大悪人の「不死身」ではないかと睨んでいる。もし不死身ならば、肩に、元囚人である証拠の、焼き印が入っているはずで、これを暴くために、ミショノー嬢は、スパイの仕事を任され、彼を酔わせ、肩の焼き印を発見せよというミッションを与えられる。
 
 
とうのヴォートランは、天然な性格の学生ウージェーヌ・ラスチニャックという若者がたいへんに気に入ってしまったようで、自分の闇家業と、暗い権力と、闇の資金の大半を授けてやろうと画策している。さすがのウージェーヌ・ラスチニャックも、これは自分の理想の正反対だと理解して、ヴォートランからの提案に青ざめているんです。
 
 
さらにはゴリオ爺さんは、娘の結婚は失敗であったと考えて、彼女を吝嗇家の夫から救い出し、天然男ウージェーヌと再婚させようと計画している。これはこれで、かなり実現の難しい願望ですよ。
 
 
老いた男たち2人で、若者ウージェーヌ・ラスチニャックを奪いあおうと躍起になっているんです。どうして、彼らはウージェーヌ・ラスチニャックを好むのかといえば、彼が正直者で瑞々しく、娘たちを心から喜ばせるから、のようなんです。
 
 
ウージェーヌ・ド・ラスチニャックはタイユフェール嬢と、なにやら親密な会話にふけっている。その時の彼らを見た脇役のセリフが、あまりにもみごとでした。こういう本文です。
 
 
「あの人達一生懸命色目使いあって、この八日間、魂を奪われたみたいだわ」
 
 
外からウージェーヌの恋愛をみると、まるで馬鹿をやっているようにしか見えないのが面白くてしょうがない。メゾンヴォーケではもはや、あらゆる奸計が渦を巻いて、住民たち全てを巻きこんで、宴会が催されている。
 
 
「彼女はウージェーヌ・ド・ラスチニャック氏を愛するという罪を犯してしまったわ。そして、それがどんなことになるかも知らずに大胆に前進している。可哀想に何も知らないで!」
 
 
とうのウージェーヌ・ラスチニャックはこう思ってます。本文こうです。
 
 
  彼は自身の良心に問い続け、自分が悪を行ってきたことを自覚し、なおも悪を行うことを望みながら、一人の女性の幸運にすがって自身の小さな罪を償おうと考えていたのだ。彼女の目に彼はその絶望感により内面的美しさまでにじませ、彼が心の中に抱く地獄の炎のによって一段と光り輝いて見えるのだった。
 
 
不倫と浮気の泥沼の描写が、ほんとに魅惑的なんですよ。これ……こんな蠱惑的な物語があったのかと、衝撃を受けました。文体がほんとうに見事なんですよ。浮ついた心をさんざん描写しておきながら、今不幸な彼女には、未来の幸福が確約されていることを、語り手はさりげなく宣言する。
 
 
野心家で明るく、そして正直者であるウージェーヌを、ヴォートランもゴリオ爺さんも狙っている。何とかして彼を家族に組み入れたいわけです。ゴリオ爺さんはウージェーヌ・ラスチニャックに結婚をすすめ、新居まで用意したと告げてから、こう言うんです。
 
 
  そこでの貴方は、まあ王子様ですな。私達は貴方に、まるで花嫁のためのように家具を揃えましたよ。この一ヶ月、私達はずいぶんなことをやりました。
 
 
ゴリオ爺さんの望みは、娘にみずみずしく楽しい日々を営んでほしいということなんです。それには天然な性格で、正直者のウージェーヌがどうしても必要になる。
 
 

 
 
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢………主人公たちとおなじマンションに住む、かつて孤児だった悲しげな目の美少女。母は亡くなり、父とずっと会えぬまま生きてきた。
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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