

今日は中原中也の「山羊の歌」その16を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
冷え込む室内で、この真夏の詩を読んでいて、言葉の機能のことが、なんだか妙に気になりました。想像力豊かな人は、この真夏の情景を読んで、夏の暑さを思いだせると思うんですが、どうも自分では、脳内に真夏がやって来ない。室内の気温を見てみると13.3度で適温から5度くらい低い。もうちょっと良い暖房器具を買わないとダメかなと思ってるところでは、真夏の詩に近づけない。
肩や頬が冷えるなあ、と思いつつ読んでいるので、どうしても現実のほうが勝ってしまう。春の初めか初夏に読んだら、自分の感覚と相乗効果を成してより響いてくると思うんです。自分から感覚がどの程度離れていると、言葉が届かなくなってしまうのか、というのが気になりました。
ほんの少しだけ対人関係がある時に、豊かな人間関係の物語を読むとすごく響いてくるんですけど、暖房が完備できていない真冬には、真夏の詩が読めないや、と思いました。
そういえば、ある哲学者が、極限に孤立した一人だけの言語は存在できない、ということを論じていたのを思いだしました。明日の自分にのみ書き残す日記であれば、明日の自分がこれを読むために言語が記せるわけで、いわば未来の自分と部分的な会話を繰り広げられるわけなんですが、明日の自分さえも存在しないような極限に孤立した条件下では、言語は存在不可能になる……という思考実験みたいな話があったんです。中原中也はこう記します。
夏の空には何かがある、
いぢらしく思はせる何かがある、
焦げて図太い向日葵が
田舎の駅には咲いてゐる。
焦げて図太い向日葵が、という詩の言葉が、なんだか真冬を破って迫ってくるように思いました。
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http://akarinohon.com/center/yaginouta16.html
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