毒麦 牧野富太郎

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今日は牧野富太郎の「毒麦」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これからしばらくのあいだ、植物の随筆をいくつか読んでゆこうと思います。できれば、文学と植物にどういう繋がりがあるのか、調べてゆければなあと思っています。今回の「毒麦」、これは牧野富太郎の「植物一日一題」の中の一つの随筆です。
 
 
さいきん、植物写真に見とれるだけでなしに、植物がどういうように活動しているのか、ちょっと興味がわいてきたんですけど、「毒麦」って言われるもんが、あるらしいんです。毒キノコなら良く聞くんですけど、イネ科で毒があるとはちょっとおどろきです。
 
 
稲とか麦というと、人間の味方で、人間に糧を与える中心的存在だと思うんですけど、どうも毒麦っていうのがあると。調べてみると、なんと聖書にもこの「毒麦」に対する警告が書き記されているらしいんです。マタイによる福音書13章の24節から30節に、「毒麦のたとえ」というものがあるんです。ここから読めますよ。麦の畑に、悪魔の使いが撒いた毒麦が混じり込んでしまった。しもべたちは、この毒麦を取り除きたいと言うのですが、主人は、収穫するときに分別すれば良いのであって、それまでは毒麦に関しては静観しておけと、誤って本物の麦を台無しにしたりしてはいけないぞ、と述べます。マタイ伝の該当部分を以下に引用してみます。
 
 
  ……
  天国は、良い種を自分の畑にまいておいた人のようなものである。人々が眠っている間に敵がきて、麦の中に毒麦をまいて立ち去った。芽がはえ出て実を結ぶと、同時に毒麦もあらわれてきた。僕たちがきて、家の主人に言った、『ご主人様、畑におまきになったのは、良い種ではありませんでしたか。どうして毒麦がはえてきたのですか』。主人は言った、『それは敵のしわざだ』。すると僕たちが言った『では行って、それを抜き集めましょうか』。彼は言った、『いや、毒麦を集めようとして、麦も一緒に抜くかも知れない。収穫まで、両方とも育つままにしておけ。収穫の時になったら、刈る者に、まず毒麦を集めて束にして焼き、麦の方は集めて倉に入れてくれ、と言いつけよう』。
 
 
牧野富太郎は、植物学者として、この毒麦が日本でどの程度繁殖しているのかを調べ、たいていの小麦の中毒は、カビや湿気などが原因であったり、またまれにこの毒麦という雑草が入りこんで、毒が含まれているのだと、記しています。小麦に、天然の毒が混入するなんてことは現代ではほとんど0%だと思うんですが、くわしくはwikipediaのドクムギをごらんください。
 
 
毒性の強いのが、どうも日本でもたまに生えていると。植物もしらべてゆくと、忍者武芸帖みたいに群雄割拠で、隠れ蓑の術で、小麦みたいな生え方をする毒草が生き残り続けたり、しているんだなと、思いました。
 
 
ぼくの活動はマネをする技法が多いもんで、どうも「擬態」という生き方に妙に関心を持ってしまうんですよ。それで、wikipediaに記された『作物への擬態をする雑草』というページを読んで、すこぶる衝撃をうけました。こう書いています。
 
 
  作物への擬態
  田畑など耕地に発生するものでは、作物に擬態するものがある。タイヌビエは、水田でイネの間に生え、イネによく似た株の形を示し、イネと同じくらいの背の高さで、同じ頃に結実し、小さな種子を稲刈りの前に散布して、駆除の目を潜りぬけ、水田の管理に沿って世代を繰り返す。苗のころには、タイヌビエはイネと見分けるのが難しいが、イネにはある葉の付け根の薄い膜がないので、熟練した農民は識別する。イヌビエの仲間ではヒメタイヌビエがイネに擬態するが、タイヌビエほど顕著ではない。また、ライムギやエンバクのように、擬態を推し進めているうちに、本物の穀物になったものもいる。こういった栽培化された雑草は、劣悪な環境の田畑で生息しているうちに、環境に適応できなくなって絶えた本来の作物に取って代わり、有用性に気付いた人間によって利用されるようになったと考えられている。
 
 
もともとは雑草だったのが、生き残るためにマネをしまくっているうちに、ちゃんとした農作物にまで昇格したヤツまで居るそうです。ライムギエンバクです。植物すげえなと思いました。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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