時の流れ 鈴木大拙

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今日は鈴木大拙の「時の流れ」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
鈴木大拙はアメリカに禅を紹介した仏教学者なんですが、今回は、過去現在未来についての、哲学的な随筆を書いています。
 
 
過去と現在の間にラインを引くことが出来ない。今の時刻を、秒針を見ながら書き記すと、もう数秒前の過去になっちゃっている。現在を厳密に特定することがどうも、できない。この文章が印象に残りました。
 
 
  「時」は痕跡であるから、それのみを「事実」だと見て居ては、巨人の独尊者はもうそこには居ないのである。吾等の考への混雑は実に此矛盾から始まると云ふべきであらう。
 
 
ゲーテもこういうことを言ってますよ。「君たちが盛んに論じているのは十年以上前のゲーテであって、もうぼくは、とっくにその先に進んでるから、そこに拘泥していても意味無いよ」みたいなことを言ってました。
 
 
固定したり分割することがじつはできない。抽象と具体の区別もじつは、あいまいだ、と鈴木大拙は言うんです。鈴木大拙は哲学というよりも、禅の問いをここでやっているようで、独尊者という仏教語を持ってきている。wikiで調べた限りでは、「仏さまだけが唯一、苦から解脱しているので尊い」かあるいは「仏さまだけが衆生の苦を安んずるので尊い」という意味でこの言葉を使っているようです。ただ、鈴木大拙は、西洋哲学もここで同時に論じているので、とくに釈迦の教えのみを開示しているわけでは無いんです。大拙は「独尊者」のことを「彼」といって、つまり現代史の立役者について論じてもいる。また狗子仏性くしぶっしょうを説いた趙州という禅僧も独尊者の一人だったと、本稿に明記しています。
 
 
現代の歴史を捉えるって、すこぶるむつかしくって危険だよ、って鈴木大拙が言うんです。どの日本史について語っているのか、ぼくには判らなかったのですが、本文にこう書いています。
 
 
  随つて歴史が其上に何か跡づけて行くと云ふのは、本当の歴史の影を追つかけて飛びまはると同じである。手に入れたと思ふのは抜殻に外ならぬ。そんな抜けがらを捉へて後生大事と心得て居るものに限つて、生きたものを死んだものに仕替へてしまふ。即ち死骸のミイラを仏壇なり神殿なりに祭り込んで、その前に三拝九拝して、その中から後光の流れ出るのを待つて居る。鰯の頭の信心よりまだ馬鹿げて居るのみならず、こんな手合ひに限つて、自分の抽象した干枯びたミイラの押売りをやらうとする。自分だけの信心ならそれもさうで、別に他から何とも云はれず、またそれで趣きのあるものである。が、干物の押売をやる連中になると、その禍の及ぶところ誠に図り知るべからざるものがある。
 
 
えーと、つい先日、水質の汚染について考えるための環境問題プロジェクトを台湾芸術大学の学生が発表して話題となったんですが、学生とは思えない秀逸な作品なんです。
 
 
鈴木大拙が危険視しているのはこの学生たちのまなざしとはまるで無縁な、大がかりな暴力組織のことで、ちょっと引用するのもむつかしいんです……なんだか怖ろしいことを書いてしまって申し訳ないんですが、近代文学や戦前思想の読解と紹介は、もうすこし慎重にやらなきゃいけないなと思いました。くわしくは本文を読んでもらいたいんですが、最後の数行がすごいんです。
 
 

 
 
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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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