陰翳礼讃(9) 谷崎潤一郎

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今日は谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」その9を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
谷崎潤一郎は、絵筆を持たない画家であるかのように、実に独自な視覚について述べてゆくんです。今回は日本座敷の美について論じているんです。障子からもれる静謐な光について描いています。恐ろしささえ思い描かせる座敷には、陰翳の魔法がかかっている……と美しい文体で記すんです。
 
 
照明を隅々にまで当ててしまった場合、そこからもはや美が消失する……。西洋絵画で言うならボッティチェッリの『プリマヴェーラ』は陰と黒の描写が美しく、日本画は狩野派の金箔絵画のように、いっけん影が無いものばかりのようですが、それでも蕪村の『鳶鴉図』はまさに影と闇の色が全体の美を形づくっています。日本画では影をゼロにすることによって美を構成してきたんですけど、その中で現代日本絵画のような、陰翳の美を捉えはじめたのは誰からだろうか、ちょっと調べてみたんですけど、自分で判った範囲では、おそらく長谷川等伯こそがまずいちばんはじめに、木々の影で美を描きだした。それから、少し現代に入ると東山魁夷が森の奥に潜む青青とした陰を絵画に描きだしたんだと思いました。ちょうど現代の日本画家は、かつての日本美術が捉えてこなかった影を盛んに描いているんです。
 
 
谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」を記したころから、日本美術が陰翳を主役にして描くようになった気がしました。じっさいにはそれより前の時代から急に、日本美術に陰翳が現れてきたんです。17世紀のレンブラントフェルメールの画集が日本に入ってきた時に、陰翳の描写に対する衝撃があったのではないでしょうか。
 
 
谷崎の描きだす陰翳の空間と、障子からとどく淡い明かりの描写が秀逸でした。陰翳が色濃く、障子の白がただひたすらに白いだけで、光としての力を持っていない。この力を持たない存在こそが、そこはかとなく幽玄で、瞑想的な美をかもしだしている……。ここでの谷崎の筆致が、なんともいえず凄いんです。

 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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