コーヒー哲学序説 寺田寅彦

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今日は寺田寅彦の「コーヒー哲学序説」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
近代に於いては、ミルクが薬として使われていた……という事実が書かれてるんです。体調悪いときに、タマゴとか温かいミルクとか、すごく効きますし、昔の話しも参考になるなあ、とか思いました。今年の冬に風邪をひかなかったのは、ミルク野菜スープをしょっちゅう食っていたからかもしんないとか、本文とまったく関係無いんですけど思いました。近代随筆の魅力のひとつは、現代社会のなり立ちの起源みたいなのがちょっと見えてきて、今の時代に見なれたものが新鮮に思えてくるところがある……んじゃないかとおもいました。
 
 
寺田寅彦は、西洋の食がだんだん日本に入ってきて、食糧事情も少しずつ向上していった時代の変化を、実体験を元に描きだしています。幼い頃はコーヒー牛乳が薬のように扱われていた時代で、大人になると寺田はベルリンのカフェでコーヒーを飲むようになった。だんだん世界が広くなる描写がすてきなんです。近くにあった出来事を書きつつ、時代の流れを鋭く捉えるのが、とくべつに上手いんだなあと思いました。
 
 
寺田の書いていることは、自分たちの実体験とも通じるように書いていて、そこが随筆として秀麗なんではないかと思いました。ジャスミンティーや緑茶や珈琲を飲み過ぎると、眠れなくなってさらに知覚過敏になって身体の不調なところが痛んできたりすることがあるんですけど、寺田の指摘はこういうものなんです。本文こうです。
 
 

  コーヒーが興奮剤であるとは知ってはいたがほんとうにその意味を体験したことはただ一度ある。病気のために一年以上全くコーヒーを口にしないでいて、そうしてある秋の日の午後久しぶりで銀座ぎんざへ行ってそのただ一杯を味わった。そうしてぶらぶら歩いて日比谷ひびやへんまで来るとなんだかそのへんの様子が平時とはちがうような気がした。公園の木立ちも行きかう電車もすべての常住的なものがひどく美しく明るく愉快なもののように思われ、歩いている人間がみんな頼もしく見え、要するにこの世の中全体がすべて祝福と希望に満ち輝いているように思われた。気がついてみると両方の手のひらにあぶら汗のようなものがいっぱいににじんでいた。なるほどこれは恐ろしい毒薬であると感心もし、また人間というものが実にわずかな薬物によって勝手に支配されるあわれな存在であるとも思ったことである。
 
 
こういう体験したことがある人、多いと思うんですけど、そのことをすぐに忘れちゃって、原因と結果を上手く結びつけられなかったりする。寺田は誰もが経験しそうなことを、論理的なものに整理してくれるんだなあ、と思いました。
 
 
寺田寅彦のエッセーを読んでいたら『コーヒー&シガレッツ』っていうジム・ジャームッシュ監督の、映画のことを思いだしました。 
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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