山椒大夫 森鴎外

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今日は森鴎外の「山椒大夫」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これすごいんですよ。濃厚な物語です。ぼくはどうも気弱な性格のためか辛辣な物語を読み込めないたちなんですが、本物の軍医であった森鴎外の物語は読んでみるとこれ、すっごく本格的な文学ですね。嚇しのために顔に傷を入れるという奴隷商の加虐性について強い拒絶感があるんですが、物語全体を通して共感するところがありました。
 
 
この山椒大夫という物語は、新藤兼人監督の師匠である溝口健二監督が映画化していてヴェネチアビエンナーレで賞を獲っているんですが、ぼくはこの映画版をまず先に見たんですよ。ぼくは新藤兼人監督が関係している映画ならもう全部見たいというファンなので、その師匠であった人がどういう映画を撮ったのか興味があって見ました。これはモノクロ映画ファンなら必見の映画ですよ。それで、じゃあ森鴎外の原作も読まなくちゃと思って読んでみると、かなり印象が違ったり内容が異なっていたりして、これはもう行間を読むなんてもんじゃないな、行間を過たずに創造してしまった、すごいと思いました。別の人が書いた物語をより深く独自に掘り下げてゆくというのはなにも映画だけに限ったことでは無いようで、たとえばトムソーヤの冒険などが、新しい作家によって異なる名作として何度も生まれ変わっているようです。原典があるのに、さらに新しく物語が作られるということはけっこうあるようです。
 
  
 
ところで森鴎外は小説家である前に、軍医であって、軍人の思想に詳しく、脱走兵をけっして許さないという恐ろしい思想について描いています。不寛容な大組織について深く検討しています。この物語では軍組織を描かず奴隷商の頭である山椒大夫と、これに囚われた哀れな2人の姉弟についてが描き出されているのですが、森鴎外の筆致は記録文学のような冷静な描写で、本当にこういう奴隷商という組織があったのだろうなと判らせるような、現実感のある描写です。運命に翻弄される幼子、厨子王(ずしおう)の、人権の確立の過程と、親子の思慕の情についてが描き出されます。行間を想像する、行間を創造するというのがどういうことなのか知りたい、という方はぜひ映画版の山椒大夫とも見比べてみてください。原作では前半の父親についての描写がまったくないのですが、この父親の姿を原作を読みながら想像できる人ってすごいなと思います。厳しい現実の中から、いくつもの美しい挿話と挿話とを拾い集めていって全体を眺め渡し、一本筋を通して背骨を創りあげるという創作に感銘を受けました。
  
   
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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