夢十夜 夏目漱石







今日は夏目漱石の【夢十夜】を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。





夏目漱石は、学生の頃に親友になった正岡子規(や高浜虚子など)の導きによって文学者になっていったようです。それは一番はじめに書いた「吾輩は猫である」という小説の序文に記されています。漱石の親友だった子規は、いわゆる知的なガキ大将で親分肌でした。子規は主戦主義だったし戦争がはじまると志願して従軍記者になって、戦地に赴きそこで体を完全に壊してしまった。漱石はそれとずいぶん違っていて兵役から逃れるために北海道とかに籍を置き、とにかく「お上」というやつがやることが幼い頃から全く信用できなかったようで、逃げに逃げまくっています。可能な限り逃げ続けたんじゃないかと思えます。逃げると言うことは、その問題の本質がよく判っていると言うことですよ。よく判っていない時ほど逃げずに正面から突っ込んでゆきます。それで漱石は戦争から逃げますし、親友である正岡子規の病と死からも逃げに逃げて一万数千キロを海や陸を渡り続けてイギリスにやってきます。英語はわかるんだけど、当時東洋人差別の激しかった英国文化は判りようがない。それで「事情が全く違うんだから、よそさまのことを中心にして考えてはいられない」という結論を出して、自己を中心にして社会とまっとうに関わろうと決めるんです。自己本位です。









「自己中心的」というのは現代ではよく否定的に言われますが、それは己を中心にして人と人との関係性を意識的に悪化させちゃおうという思考なんですが、漱石は自分が発案者になって社会との関わりの仕組みを作っていってやろうというタイプです。









漱石はイギリスで自室に籠もりきりになって、文部省がやらせようとした「英語けんきゅう留学」とはぜんぜんちがうことをやってるんです。授業にも行かずに自室で文学を独学したりしていた。あと、漱石はイギリスの切手とか絵本とか小物が好きだったようです。当時の日本ではほとんど無かった自転車にのったりして、「自転車すげえー」とか一人で言ってた。自己本位です。









それでそのイギリス留学中に、漱石は病床の子規から手紙を受けとるんです。「僕はもー駄目になってしまった」と記された、正岡子規からの最期の手紙です。その手紙を受けとって、どうやって伝えたいことが書けるかというと書けません。書けない。書けないので、いっけんなんでもないような軽い手紙を書いて送った。そうしてあとからそのことについて考えていった。僕の解釈では、夏目漱石はここを原点にして誕生しているように思えます。コミュニケーション不能な事態をなんとかして表現しうる方法というのを、独自の文学観を用いて創っていった。正岡子規の死や仲間や親類の死を見送れなかった漱石の心情が、物語に昇華されていってるんじゃないかと。









この夢十夜は、初期のひょうげの物語から、中期後期の生老病死を見つめる文学へと連なってゆく、ちょうどその境目の魅力があると思います。









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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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