外套 ニコライ・ゴーゴリ



今日はニコライ・ゴーゴリの『外套』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
『外套』はロシアの文学のなかでもっとも有名な中編小説ではないでしょうか。ドストエフスキーがこの『外套』のことについて「我々は皆、外套の中から出てきた」と述べていていて、自身の「貧しき人びと」という小説の原点のように捉えているのです。




これは寒さや貧困といった自然な感覚と、不自然な大組織との対比が見事に描かれている小説です。アカーキイ・アカーキエウィッチという風変わりな名前の主人公は自分の仕事に夢中で、世間で持て囃されているような幸福にはほとんど興味を持っていない、孤独好きな男なんです。そして、なにかというとからかわれている。純情さや偏狭さが目立つ、馬鹿にされてしまいやすい男なのです。仕事中にも同僚がなんやかやとへんないたずらをしかけてくる。


あまりいたずらが過ぎたり、仕事をさせまいとして肘を突っついたりされる時にだけ、彼は初めて口を開くのである。「かまわないで下さい! 何だってそんなに人を馬鹿にするんです?」それにしても、彼の言葉とその音声とには、一種異様な響きがあった。それには、何かしら人の心に訴えるものがこもっていた


こういう純粋で生真面目な男が、ボロボロになった外套(がいとう)ではどうにもこの冬の寒さを乗り切れそうにないと悩んでいる。彼は役人でありながら大変な貧乏暮らしで、服を買えるような貯金さえ無かった。




アカーキイ・アカーキエウィッチにはカネが無いんです。それから地位とか名誉とかいうもんが無い。また凍死を防ぐような服が無い。そうして彼を助けるような隣人の愛が無い。このままでは未来が無い。この無い無いづくしの状況で、どうしても外套を買いたい。外套がないと凍死してしまう。しかしカネがないから服が買えない。【衣食住】というのが人の原点のようなものであるのですが、このゴーゴリの小説は、外套が、人としてどうしても必要なものなのだ、と訴えてきます。




つぎはぎだらけの外套は、もはや修繕さえ出来ないほどボロボロになっている。貯金はほとんど全くない。しかし彼はなんとか生活を切り詰めて、新しい外套を買おうと決心する。彼はあたたかい外套を着て街を歩く姿を想像します。その時の、彼の、未来が有るじゃないかという感覚が私たち読者に強く焼き付いてゆくわけです。残念ながらアカーキイ・アカーキエウィッチの結末は偶然の悲劇に見舞われて哀れなものですが。終盤は、いわゆる日本での封建時代などによくあった直訴と怨霊の物語になっています。




このゴーゴリの小説は、不自然な大組織の主義主張であるよりも、私たち個人個人の生活のほうを中心にしてものを考えてゆくべきだ、ということに気付かせてくれる物語なんじゃないでしょうか。外套を、【新調】するんだ、という時の、その新たな服への憧れをみごとに感じさせてくれるのがすごいなと思います。





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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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