孔乙己 魯迅

今日は魯迅の「孔乙己(こういっき)」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
魯迅について少しだけ紹介してみます。魯迅といえば「阿Q正伝」と「狂人日記」が有名で、名前さえはっきりしない男の苛烈な挫折を描き出し、鞏固な旧体制を辛辣に批判した作家として有名なのですが。最近、「Q」という文字が大流行していますがおそらくこの魯迅が書いた「阿Q」が元になっているんだろうと思います。魯迅の随筆や他の小説を読んでゆくと、とにかく苦労を積みかさねている人物を丁寧に追い続けていています。苦を受けた人そのものへのまなざしが、魯迅の文学の中心にあるようです。狂気や無知や無理解、ということを誇張して描き出してきたのが魯迅なんだと思っていたんですが、随筆を読んでゆくとどうもそういったものは魯迅の一部でしか無く、またそれらの物語を描いた動機を調べてゆくと、魯迅の言葉にそれらの描写が「悲哀」や「寂寞」から生じていることが記されています。魯迅は記します。
 
 
  寂寞はなお日一日と育って来て、大きな毒蛇のように、私の魂にまといついた。しかし私はつかみどころのない悲哀をひとり抱いていたとはいえ、べつに憤(いきどお)ろしくはなかった。というのはこの経験が私を反省させ、自分の姿を見せてくれたからです。つまり私は臂(ひじ)を振って一たび叫べば、応ずるもの雲のごとく集まるといった英雄ではけっしてないのだ。ただ自分の寂寞は追いはらわないわけにはいかなかった、それは私には苦しすぎたから。私はそこでいろいろな方法で自分の魂に麻酔をかけ、私を国民の中に沈ませ、古代に帰らせようとした。
(魯迅 その文学と革命/丸山昇/平凡社/P.5)
 
 
そうして魯迅は、青年時代に特有の慷慨激昂(こうがいげっこう)の気持ちはもうなくなっていた、と述べています。なぜ、若者のひどいくらいの挫折を描くのかというと、魯迅本人はこう述べています。それは、寂寞の中を疾駆する猛士のごとき若者たちをいささかでも慰め、「彼らを後顧の憂いなしに先駆させてやろうという気持ち」から表現している、と。
 
 
魯迅は、幼い頃裕福な家庭に育ったのですが一家が没落し、日本で医学を学びます。しかし差別と国家間の軋轢に直面し、啓蒙や革命と言うことの必要性を感じるようになり、医学よりも文学こそが人を救うのだと確信して、文学者を志すようになるのです。
 
 
魯迅のことがもっともよく判るように記されている書物は「呐喊自序」という文章なのですが。魯迅はこの「自序」にて、苛烈な挫折を描きながらも、未来に希望を託して描いているのだ、と述べています。詳しくは魯迅「自序」を読んでもらいたいのですが、魯迅は「希望は将来にあるもの」だ、希望は未来に存在している、と述べます。どのようなものであっても「希望が絶対に無い」ということは証明することが出来ない。魯迅は「寂寞の中を奔走している」ような若者が、「おそれることなく前進できるよう、少しでもいたわることができればと思う」と述べています。
 
 
幼時に魯迅の家は没落するのですが、もともとはかなりの格式があった家で、魯迅の祖父は学問を修めて「進士」という特別な階級を持ったお役人だったんです。この周家の没落の契機となったのは祖父の下獄が原因だったそうです。この「孔乙己」という小説では、独学を志した男が盗みと酒におぼれ、哀れにも没落していつも笑われている様が描かれているのですが、どうもじつは祖父や親族に似た境遇の男を想像して書いたようです。
  
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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