カフカ解説 原田義人

今日は原田義人の「解説」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは「世界文学大系58 カフカ」という本に書かれた解説文です。さいきん、カフカの10章からなる短い随想をよんですっかりカフカにはまってしまって、もいちどカフカの「審判」を読み終えました。ドストエフスキーやトルストイを読み込んでいる人なら「もっとすごいのがあるよ」と言われると思うんですが、ぼくはどうもこう、カフカにすっかりはまってしまいました。本を読むことは良いことよりも悪影響のほうが多いんだよ、と言っておられた方が居るんですが、まさにそういう感じでカフカの毒にやられた気分です。


カフカ自身の随筆や、カフカ解説というのを読んでゆくと、カフカが描き出そうとしているものがより判りやすくなった気がします。カフカの審判については、「門番」の挿話というのが9章に差し挟まれていて、これがじつに印象的なんですが、これじつはカフカが別の短編小説に書いている、とてもふしぎな物語なんですよ。その物語を審判の終章近くにもってきた。詰め込めるだけ詰め込んでみたという印象がある小説です。はじめから最後まで、はなしの根本は不動で、まったくいわれのない罪についてどこまでも考えざるを得なくなる、と言うことなんですが、その物語の根っことなっている部分を彩ってゆく、枝葉の部分の配置が秀逸で、大きな物語と小さな挿話の絶妙な関係性に魅了されました。
 
 
この解説で、原田義人氏はカフカの2つの特徴を述べています。ひとつはカフカ自身の随筆から読み解けるような、不動の人間らしさについて描かれたものです。そしてもう一つは、カフカの小説の中で記されているような、人間らしさを喪失したという描写です。カフカはこの両面を念頭に置いて読み解くと良い、と記されています。カフカを広く世に知らしめた友人の作家ブロートによれば、カフカはニヒリズム(虚無主義)でも無いし、カトリック的解釈からも充分には読み解けないそうです。様々な知識人によって、カフカについてのあらゆる考察がなされたのですが、いずれもはっきりと何かに当て嵌まらない。ニヒリズムでもカトリシズムでもない。ではけっきょくカフカの小説とはなんなのか、というのをエメリヒという批評家はこう告げています。「いわば人間存在そのものを表す詩的な形象文字だ」結論ありきの文章の場合はそこから意味を抽出できるのですが、カフカの小説からは目的や意味を抽出できないようになっていて、カフカはおそらく人間存在そのものの模型を小説で描き出そうとしたのだそうです。だからカフカの作品は必然的に未完が宿命づけられていて、それは1人の人生が「完成した」というようにはならないのと同じ理由からなのだ、とエメリヒは力説しています。カフカについて語るときにいろんな評論家がそれぞれに違うことを書いていて、誰もが「いいから俺の話しを聞け!」と言っているという事実が、なんかすごいです。
 
 
それから、ハースという評論家が、カフカは社会描写や歴史描写が実はひじょうに念入りで、カフカの小説はじつは地方色が豊かな物語なんだとこれもまた力説していて興味深いです。ハースが言っていることを現代日本に置き換えてみれば「日本の学校が舞台になった小説を、日本のことをまったく知らないスイス人が読んでも共感できないでしょう、誤解しか生まれませんよ」という話なんですが、でもぼくたちはカフカの暮らしていた1890年代のドイツ・プラハ(プラーク)のことを知らない。知らないけどどこかに魅了される。ふしぎなことだなあと思いました。
 
 
カフカ本人は「ありふれたものそのものが、すでに一つの奇蹟なのだ。ぼくはそれをただ書きとめるだけだ」と述べ、書くことを「祈りの形式」なのだと記しています。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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