ゲーテ詩集(16) 生田春月訳

今日は生田春月訳のゲーテ詩集(16)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
このゲーテ詩集は、生田春月がすべて翻訳しているのですが、その翻訳者であり詩人である生田春月は、この詩集についてこう記しています。ちょっと長いですが引用しておきます。
 
 


ゲエテはつひに『私のゲエテ』となつた。今、この小さな詩集を世に出すに當つて、私はただナイイブな喜びを表白することよりも、より氣の利いた何事をも知らない。いかなる小さな著作といへども、それが世に現れる迄に、いかに多くの困難を克服したかを談つてゐると言つたブランデスの言葉を想起して、私は暴風の中を凌いで來た航海者の、港の入口で感ずるあの歡喜と安心とを禁じ得ない。

ポオプのホメロスの飜譯を贈られた英吉利のある貴族は『ポオプ君、これは大變結構だ、然しホオマアぢやないね』と言つたさうだ。私もまた『春月君、これは大變結構だ、然しゲエテぢやないね』と言はれるかも知れない。然し私はそれで滿足である。ゲエテをゲエテのままに示し得る人はゲエテの外にない。私はこの集に於て、ただ自分を示し得るのみであらう。これは『ハイネ詩集』の場合に於ても同樣であるが、ただ、ハイネにあつては、私はなほ或點までat homeであり得たし、また二人の間の懸隔がこれ程に甚しくはなかつたのであるが、ゲエテに於ては、私は宛もこの見すぼらしい姿でワイマルの宮廷にでも導かれたやうな當惑を覺えずにはゐられなかつた。それゆゑここに現れたゲエテはかの『ポオプのホオマア』の如く、また單に『私のゲエテ』に過ぎないのである。私はただそれがポオプに於ける如く『大變結構』でないことのみ虞れてゐる。

元來、詩の飜譯は獨特のものである。それは最も危險なる冐險の一種である。それは不可能を可能にせんとする努力である。それは既に一種の創作と見なすべきものである。常に粉本を横に見て詩作する或種の模擬詩人のそれよりも、より意義ある創作と見なすべきである。もつとも私は出來得る限りゲエテの世界に沒入しようと努めはしたのであるが。

ゲエテの詩は殆んど無數である。ここに集められたものは、然しその代表的なものである。




以上です。翻訳すると原文とはまたことなる詩が生まれるということなんだろうなあと思います。「愛する人に」という詩が好きになりました。

 

いま野に咲いてゐる春の花もこのわたしには
おまへより美しくはない
天使よ、おまへのゐる処にこそ愛もあれば幸福もある
おまへの処にこそ自然もある
 
 


 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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