一九二八年三月十五日 小林多喜二

今日は小林多喜二の「一九二八年三月十五日」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
このまえ1928年7月7日に記された詩を読んで、この年に起きた労働者迫害の記録を調べていました。「一九二八年三月十五日」は伏せ字や失われた原稿があって完全なものではないのですが、小林多喜二のデビュー作と言える作品です。1928年にははじめての選挙があって、その数ヶ月後に警察が数多くの左翼活動家を不当逮捕した、そのことが描かれています。
 
 
これが書かれた翌年に、蟹工船という名作が書かれます。小林多喜二が亡くなった年齢が自分より若いと言うことに衝撃を受けました。
 
 
小林多喜二文学の魅力は、多くの人が寄り集まっているときのその熱気の描写だと思います。迫力のある文体で、まさに群像劇です。リフレインする文体とでも言うんでしょうか、リズムのある描写なんですよ。小林多喜二はこういう書き方をします。


     彼は寒さからではなしに、身體がふるえ、ふるえ――齒のカタカタするのを、どうしても止められなかつた。

     皆は灰色の一かたまりにかたまつて、街の通りを、通りから通りへ歩いて行つた。寒さを防ぐために、お互に身體をすり合せ、もみ合せ、足にワザと力を入れて踏んだ。ひつそりしてゐる通りに、二十人の歩く靴音がザツク、ザツク……と、響いて行つた。
     
 
 
電気代がとどこおって、60日以上暗闇の中で暮らす家族とか、まじめに働いていた若者がいつのまにか、当時の日本型ファシズムと相容れない共産主義に染まってゆき憲法無視の横暴な警察に付け狙われるようになってゆくさまを母親が震えながら心配する場面など、とても印象的なシーンがたくさんあります。
 
 
多喜二はこの物語を

「インテリゲンチヤ」の過去を持つたものが、この運動に真実に、頭からではなしに、「身体をもつて」入り込もうとする時、それはしかし当然の過程として課せられなければならない

危機への直面であると記しています。この危機的な場面と、家族を思うという場面とが美しい対比になっています。監獄の壁に爪で刻み込まれた労働者たちの声、というのがすごい迫力で描かれています。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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