魔の退屈 坂口安吾

今日は坂口安吾の「魔の退屈」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ちょっと戦争に関連した作品ばかりで偏っていて申し訳ありません。次回からは明るくておもしろい本も紹介してゆこうとおもいます。これは戦時中に召集令状が来るか来ないかという状況での心理状況を書いた随筆です。現実にあったことが記されているので読み応えがあります。
 
 
昔読んだ物語論に、重大な問題について描くときには、それについての前後が想像できるかどうかこそが大切なんだという話があって、つまり戦争で言えば戦闘中の激しい場面だけを切り取るのがダメで、その大問題に関わった人の、それ以前とそれ以後が見えてくるのが名作なんだ、という話だったんですが、ぼくはそれを読んだ時になるほどそういうことだったのかと思いました。
 
 
坂口安吾は戦時中の、戦争に行く手前の状況で、もう死ぬかもしれないなと言うときに、猛烈に本を読んだそうです。それから戦争が負けるのがほぼ確実になってきたときに、黄河の映画を撮るための脚本を書いてくれと頼まれた話を書いています。どう考えてももう、これから長い期間、中国の映画は撮れそうに無いという状況下で、それでも黄河の歴史のことを調べ続けてゆくというのがすごいなと思います。どうしてそれをしたかというと、黄河のことを知るのが楽しいことだったから、好奇心というものがすごくあった、と坂口安吾は記しています。
 
 
坂口安吾は東京が空襲でやられることを判っていながら、あえてそこに留まっていて、身軽に避難できるように書きかけの原稿はぜんぶあらかじめ燃やしておいて、そうしてまで空襲を見とどけようとしたそうです。すごい作家魂ですね。
 
 
空襲下の東京ではほとんど泥棒が無く、個性や遊びが無く、荒廃していてまるで人間らしさが失われていて、ほとんどの人が暴漢というかギャングのように生きるしか無く、その魂を潤すのが坂口安吾の場合は読書だったそうです。坂口安吾は実際に見た空襲や戦争のことを「こつちの意志だけではどうすることも出来ない現実である」と記しています。
 
 
反戦主義で他人の幸福のために生きようとする共産党員がですね、そういう美しい青年がこの随筆に出てくるんですが、なんかすごくその描写がよかったです。坂口安吾はとにかく趣味と好奇心に生きた人なんですが、自分が他人を好きだと思ってする行動が、ほんとうは悪魔的なもので、魔の退屈というものから生じているんだと告白しています。
 
 
窮状においては、むしろ長い歴史の意味合いがはっきり現実として現れてくる、と坂口安吾は指摘しています。

 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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