今日は夏目漱石の「草枕」その13を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
草枕は、今回の第13章で完結です。次回から、漱石の『虞美人草』を読んでゆこうかと思います。
病身の正岡子規が、従軍記者となり、日清戦争末期の取材に出かけるために、軍と行動をともにする、そういう選択をした、そこのところを、今回、漱石は物語に落とし込んで、描いているように思いました。山奥の、何も起きないはずの土地にまで、日露戦争という、大きな現実が入りこんでくると言う描写でした。
舟のシーンが印象的で、漱石の友人であった森鴎外の『高瀬舟』(1916年・作)と共通する描写があるように思いました。
漱石の求めた非人情、義理や人情から解放された心もち、というものが、やっと目に見えて物語に現れてきたように思えました。どのような状況であっても、そのすぐそばに、なにか安らかなものが存在している、という描写があって、美しかったです。女は、わたしの顔を、絵にしてみてください、と言うのでした。それぞれにゆくところがまるで異なるのに、同じ舟に乗って、しずかに話しあっている、というのがじつに文学的な情景だなあと思いました。
ここから先は、完全にネタバレなので、今からはじめて草枕を読み終える予定の方は、読まないでほしいんですが。ビルケナウ強制収容所へと続く線路であるかのように、不吉な文明の象徴が描かれていて、読んでいるだけで顔が蒼くなりました。原文はこうです。
余は汽車の猛烈に、見界なく、すべての人を貨物同様に心得て走る様を見るたびに、客車のうちに閉じ籠められたる個人と、個人の個性に寸毫の注意をだに払わざるこの鉄車とを比較して、――あぶない、あぶない。気をつけねばあぶないと思う。現代の文明はこのあぶないで鼻を衝かれるくらい充満している。おさき真闇に盲動する…………
スタンドバイミーや宮沢賢治の銀河鉄道のように、ゆたかな旅路へと導いてくれる線路ではなく、まさに破滅へ向かう鉄道が存在しうることを、1906年ごろにすでに描いていたというのが衝撃でした。女は、愛しさからか、兵にとられる男に「死んできなさい」と、ひどいことを言う。しかし、その女の表情には、あはれ以外のなにものでもないものが宿っていた……。
漱石は、作中で、フランス革命と、イプセンと、個人の革命について、論じていました。
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幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
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