十二月八日 太宰治

今日は太宰治の「十二月八日」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
この作品は、30代の太宰治が、1941年12月8日の太平洋戦争開戦のことを、10日以内にほぼリアルタイムで書いたものです。
 
 
「十二月八日」が書かれる前から、数多くの作家が、軍国主義の情報局(旧内閣情報委員会)から伏せ字の強制や発禁処分、そして逮捕投獄されるような悲惨な状況で、とてもじゃ無いけど、軍の批判なんて出来ない時代でした。
 
 
太宰は作中に、100年後にも読まれる日記を書かなくっちゃ、と主人公に言わせています。まさにその通りで、太宰治は70年後にも読まれる作家になったわけですけれども。
 
 
15年戦争時代の言論統制というのがどのようなものであったのか、法政大学の社会問題研究所の「太平洋戦争下の労働運動 第五編 言論統制と文化運動」というページがあるのですが、ここに正確な情報が載っていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。ドイツファシズムはヒトラーという独裁者を中心にして暴力が拡大していったのですが、日本ファシズムで中核を担ったのは軍や政府や大企業における官僚的集団だったわけで、これが最終的に滅亡以外ありえない戦争を、拡大してゆく勢力の中心になってしまった。
 
 
大規模な言論統制があって、太宰は専業作家なので、とにかく筆一本だけで何かを書かないと、生きていけないという状況にあったため、薄氷を踏むようにして戦争文学を描くことになりました。
 
 
戦後の太宰治は、占領軍のGHQからも規制を受けてずいぶん苦労をしていたようなのですが、どうもこの作品をGHQが読んじゃったのが原因ではなかろうか……と妄想していました。じっさいなぜGHQが太宰治の戦後作品に細かく削除指示を出していたのか、かなり謎なんです。
 
 
「十二月八日」は日本ファシズムの時代の、排外主義と人種差別の激しさが、如実に伝わってくる作品で、非常に生々しくて、怖ろしい作品です。戦争をするために、消費税(みたいな税金)も20%に跳ね上がっていて、戦時体制で外灯がことごとく消されて夜道が暗い。まったく現代の日本にそっくりなところがあるので不気味です。
 
 
この作品が書かれた25年ほど前に、漱石の「こころ」の冒頭で、白人が海水浴場にあらわれる場面が描かれているわけですが、排外主義の無い時代の日本は、基本的には、白人や外国人を美しい人として捉えていたのが一般的で、しかし15年戦争の時代には、軍国主義によって外国人への憎悪が煽られていて、太宰がこの作品で描いているような感覚が、世間の一般となっていた。
 
 
共感できる感情描写も多くて、無垢な赤んぼうを、女が見るまなざしにはすこぶる迫力がありました。日本のファシズムが、人間のどこまで入りこんでいたのかが明確に記されている、戦争の時代そのものの小説でした。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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