今日は夏目漱石の『門』その10を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
徐々に3人の暮らしが馴染んできて、会話も様々に展開される。歳の離れた弟、小六はほうぼうでぶらぶらしている。若いのに最近、外で酒を飲むというのを覚えたらしい。母代わりというわけでもない御米は、そういうのは辞めたほうが良いんではないかと思う。
あのー、文体がですね。すこぶる良いんですよ。なんと言ったら良いんでしょうか。小説の構造をまさに開発しているさなかの時代で、その初期ならではの美しさを見ているような感じなんだと思うんです。本文にこういう文章があります。
そのうち年がだんだん片寄って、夜が世界の三分の二を領するように押しつまって来た。風が毎日吹いた。その音を聞いているだけでも生活に陰気な響を与えた。小六はどうしても、六畳に籠って、一日を送るに堪えなかった。落ちついて考えれば考えるほど、頭が淋しくって、いたたまれなくなるばかりであった。
小六は、子なのか独立した大人なのか、なんだかよく判らない状態にあって、悶々としている。御米は小六をたいそう気遣っている。
小六というのが、現代的な悩みを抱えた若者で、この先どうなるのかどうにも判然としない。漱石はじっさいに当時の学生たちをずーっと見てきたわけですから、この描写がリアルなんです。俺は将来どういう仕事をするんだろうかと思ってた頃をやたらと思いだしました。世界の富の半分を牛耳る超大資本家や、人工知能というものに、仕事が奪われてゆく時代には、漱石の書く高等遊民の世界観がじつにピッタリと当て嵌まるように思いました。
だんだん小六や宗助のキャラが立ってきて、読むのが面白くなってきたところなんです。
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(約30頁 / ロード時間約30秒)
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ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
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