ゴリオ爺さん(2) バルザック

今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(2)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
全12回の連載小説バルザックを読んでます。
 
 
この小説では、事実とちがう噂というのが、ゴリオ爺さんの周囲で、しょっちゅう生起するんです。これがじつに独特な文体をかもし出しています。
 
 
本作で焦点が当てられているのは、貧しい人びとが見た上流階級の世界なんです。メゾンヴォーケの住人たちはみな貧乏で、裕福な社会とあまり縁が無いもんだから、ありとあらゆる変な噂が語り尽くされるんです。
 
 
この小説の書き手は、文豪バルザックなんですけど、それとはまた違う、この小説の語り手(実在しない架空の人物)が、ちょっとうさんくさい男で、それでゴリオじいさんに対して、さまざまなデマを貼りつけていっては、それをすぐに撤回する、という文章構成になっているんです。この架空の話者と、なにか芯の通っていそうに見える主人公、という対比がみごとで、物語に引き込まれました。
 
 
貧しい家からやってきた、学生ウージェーヌ・ラスチニャックの描写が良かったです。原文はこうです。

  下宿の部屋に戻り、土くれをかき集めて辛うじて起こした火の傍で、このような取りとめもない考えや気高く着飾った女性の追想に浸り、市民法と貧困の間にありながら、ウージェーヌのように熟考のうちに将来を推し測った者が、あるいは成功への夢で頭の中をいっぱいにした者が他に誰かいただろうか?……
 
 
彼は舞踏会に乗りこんでいって、いちばん美しい女と踊るんです。可憐な花を身につけた美少女です。彼女とダンスをする。そういうことをしておれば、彼は上流階級に入り込めるんじゃないかと夢想している。すばらしい未来がやって来ると思い込んでいる。
 
 
それと、娘たちを幸せにするためにお金を全て使いはたしてしまって貧乏のどん底にいるゴリオ爺さんが登場するんですが、この二者の対比が美しかったです。
 
 
学生ウージェーヌ・ラスチニャックが出会った可憐な女は、じつはどうも…………。途中、ゴリオ氏を揶揄する脇役たちが、いろんな「コル」で韻を踏んで喋りまくるんですが、「コル・ニション(間抜け)」という言葉が印象に残って、「アメリ」という映画で出てきた、「コリニョンは間抜け!」って、これは韻を踏んだセリフだったんだなと、初めて気づきました。
 
 

 
 
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■主要登場人物
・娘たちを愛するあまり破産したゴリオじいさん。
・うぶで野心家の学生ウージェーヌ・ラスチニャック。
・謎のお尋ね者ヴォートラン。
・貧しい下宿を運営するヴォーケおばさん。
 
 
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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