ゴリオ爺さん(5) バルザック

今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(5)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ヴォートランは、大金を手に入れたばかりの学生ウージェーヌ・ラスチニャックにさまざまな悪知恵を授けるんです。とにかく金持ちを見つけて結婚をしてみろと、けしかける。貧しい者の悪道と、富める人間の悪行を比較してみせる。
 
 
学生ウージェーヌ・ラスチニャックはヴォートランから距離を置いて、こんどはゴリオ爺さんと話し込むんですけど、これがまたひどい状況なんです。ゴリオ爺さんは、娘たちに財産も仕事もすべて何もかも与えきってしまって、もはや何もすることが無い。それで娘たちをまちなかから隠れて見守ることしかできない。じつに哀れな状況なんですが、本文にてゴリオ氏はこう発言しています。
 
 
  「私の人生は、この私は二人の娘のためにあるんです。もし彼女達が楽しげで、彼女達が幸福で、美しく着飾って、彼女達が絨毯の上を歩くのであれば、私がどんな服を着ようが、私がどんな所で寝ようが、どうだっていいことなんです。彼女達が暖かければ私は少しも寒くはないし、彼女達に悩みがなければ私も決して悩みません。私は彼女達が悲しまなければいいのです。貴方が父親になって、子供達が小鳥のようにさえずっているのを見て、貴方も思うことでしょう。こいつらは私から生まれてきたんだ! 貴方はこの小さな子等がそれぞれに貴方の血の一滴一滴を受け継いで美しい花を咲かせているのを感じる、そう、それなんだよ! ………………
 
 
そうして「悲しい時には、彼女達の眼差しが私の血を固まらせてしまう」とゴリオ爺さんは言うんです。ゴリオ爺さんは、悲しさを糧にして、そこから世界に繋がろうとしている。
 
 
ちょっとよく判らなかったのは、フランスの小説では、どうして不倫の恋が家族から歓迎されたり、尊い意味をもったりするんだろうか、ということです。学生ウージェーヌ・ラスチニャックは、ゴリオ爺さんの娘(銀行家の妻)と恋愛が始まりそうだと告げるんですが、父はそれを歓迎しているんですよ。現代日本とだいぶちがいますね。そこのところは、勉強不足でよく判りませんでした。どうも、父としては、たとえ不倫であっても、ほんとうの恋愛をさせてやりたい、ということらしいんです。
 
 

 
 
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢………主人公たちとおなじメゾンに住む、かつて孤児だった悲しげな目の美少女。母は亡くなり、父とずっと会えぬまま生きてきた。
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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